内容説明
1910年代、刑務所出所後、東京の最底辺を這いまわり、非正規の労働現場を流浪する。彼が描く風景の無惨さは、現代風に「プレカリアート文学」と呼べるだろう。
著者等紹介
橘外男[タチバナソトオ]
1936年石川県生まれ。1936年「酒場ルーレット紛擾記」で文芸春秋の実話募集に入選。1938年「ナリン殿下への回想」で第7回直木賞受賞。1959年7月9日没
野崎六助[ノザキロクスケ]
1947年東京生まれ。作家、評論家。1992年『北米探偵小説論』で日本推理作家協会賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gtn
26
自伝。前科者に対する世間の薄情さと、情心(なさけごころ)をかける者が僅かながらいたことを語る。著者の結論は、勿論、自棄を起こさず、人間の善性を信じること。性善説でも性悪説でもない。人間は清濁併せ持つ存在であることの傍証にもなった。2022/06/12
Kouro-hou
18
実話風作家・橘外男の一応自伝。公金横領(女を身請けした)で懲役1年半くらって出所した橘さんが、前科を隠して外国商館で真面目に働くも発覚して解雇。前科や保証人がいないのでまともな職に就けずに東京底辺をさすらう話である。何せ橘さんなのでどこまで事実なのかはよくわからないが、プロレタリア文学としても読める。そこ実名で書いちゃう?みたいな部分もある。本当は愛をタイトルに持ってきたかったそうで、世間は前科者に冷たいけど時折うける愛情や誠意が身に沁みるのだ。野崎氏の橘外男全体からみたこの作品の位置づけの解説が秀逸。2015/02/09
たく
0
逗子物語は既読で幽魂賦と棺前結婚もかなり良かったので読んでみた。 不思議な自伝だった。解説を読むと普通にイメージしている自伝とは少々異なる理由も書かれていて、いやいやこれは面白かった!!!2014/01/27