内容説明
やがて戦争の狂気にすべてが呑み込まれてしまうにせよ、日中戦争を直前に控えた挫折と抵抗と危機意識の「昭和十年前後」は、さまざまな模索に満ち、二十一世紀を目前にした現代をも照射する近代への問い直しの時代でもあった。本巻では、安易に切り捨てることなく、「転向」の時代と文学の明暗、両義性を見据えた。
目次
座談会〔非常時〕の文学―「昭和十年前後」をめぐって
〔非常時〕と雑誌の全盛
転形期の農村と「ジェンダー」―中野重治「村の家」を読みかえる
「女性的なもの」または去勢(以前)―小林・保田・太宰
女性無用の作品世界―島木健作論
プラクティカルなファシズム―自力更正運動下の『家の光』がもたらしたもの〔ほか〕