内容説明
人間とは何か?西洋哲学が探究し続けたこの問いに、キルケゴールは答える。―人間とは惨めな存在である、と。だからこそ、人間には「いたわり」が必要なのだ。人間なき政治、経済、科学が蔓延る今日、「人間になる」ことはいかにして可能か。
目次
第1章 単独者と超越(単独性;主観性 ほか)
第2章 人格とは何か(人格の生成と発展;人格神との関わり ほか)
第3章 尊厳あるものへの関わり(父ミカエルとの関係;恋人レギーネとの関係 ほか)
第4章 キルケゴールから現代へ(人間の惨めさ;自然主義、相対主義、新自由主義 ほか)
著者等紹介
須藤孝也[ストウタカヤ]
1974年、青森県生まれ。1997年、一橋大学社会学部卒業。2000‐02年、日本学術振興会特別研究員(DC2)。2010年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士論文「キルケゴールと『キリスト教界』」により学位取得。この間、セント・オラフ大学キルケゴール・ライブラリー(アメリカ)。コペンハーゲン大学サブジェクティヴィティ研究センター(デンマーク)、ロンドン大学ヒースロップ・カレッジ(イギリス)にて客員研究員を歴任。2014-17年、日本学術振興会特別研究員。2015-16年、コペンハーゲン大学キルケゴール研究センターにて局員研究員。現在、一橋大学、立教大学、法政大学などで非常勤講師を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
9
キルケゴールに限定した話ではないが先人の思想と哲学に触れるにはその人間が生きた時代や個人的な想いを知識としてうっすらとでも頭に入れておかなければならない。キルケゴールなら彼の哲学はどうしたってキリスト教的な価値観を根底にして構築されている。今この時代に生きるぼくたちの哲学は何に根ざしているのか。どんな価値観の上に、どんな視点で積み重ねられていくのか。ぼくたちの考えたことは後世に伝わりはしないだろう。研究の対象にはならないだろう。しかし自分自身がこの実存を何を基に組み立てているのかを知りたい。自分のために。2023/09/10
かるてぶらんしぇ
2
ニーチェが無神論の実存主義哲学者だとしたら、それと対をなすのがキリスト教の実存主義哲学者であるキルケゴール。実存主義者は徹底が容易ではなく、多くの人は自分の人生を生きれていない。単独者として生きることなど、不可能に近い。しかし不可能だからとて究極の理想を捨て去るべきではない。外出自粛のこのご時勢で、コレコレやガーシーchのような人を「他人の人生の観察者」に堕落させるコンテンツが流行っている。今こそ実存主義の徹底すべきとき。本書ではキルケゴールの問題点も取り上げられていて批判的に読むことができる。一読あれ。2022/03/30
Tom
1
全体を通して著者の現代日本への深い憤りが伝わってくる。現代日本には現実しか見ないリアリストがとても多いと感じる。現実に即したことしかやらなかったら何も変わらないじゃないか。理想がない。理想を持てない社会だ。自分も日々の仕事で擦り減らしていて人間になることがおろそかになりがちだったので人間にならねばと強く思った。「わかりやすい」という評価は決して褒め言葉ではないと思っているが、キルケゴールの思想を字数を費やして丁寧に解説してくれているので、キルケゴールに明るくない自分でもかなり飲み込むことができた。2021/10/26
Go Extreme
1
単独者と超越: キルケゴールの生涯 単独性 主観性 内面性 真理の超越性:人間の真理と神の真理 超越性の効用 真理を欠く状況とは 人間恐怖 この世の善と救済 ありうべき赦し 単独者にとっての他者 人格とは何か: 人格の生成と発展 人格神との関わり 人格なき「現代」の諸相 著作活動 尊厳あるものへの関わり: 父ミカエルとの関係 恋人レギーネとの関係 隣人愛 キルケゴールから現代へ: 人間の惨めさ 自然主義、相対主義、新自由主義 キリスト教について 展望2021/10/05