目次
1 九一一
2 ひとつの自然/多くの文化という分割によって与えられる間違った平和
3 単一自然主義から多自然主義へ
4 「平和ヲ欲スル者ハ…宣戦布告せよ」
5 いかなる統一なのか?自然法主義か?あるいは構成主義か?
著者等紹介
ラトゥール,ブリュノ[ラトゥール,ブリュノ] [Latour,Bruno]
1947年フランスのボーヌ生まれ。哲学者・人類学者。現在、パリ政治学院のメディアラボ並びに政治芸術プログラム(SPEAP)付きの名誉教授。専門は科学社会学、科学人類学。主な著書に『科学が作られているとき―人類学的考察』(川崎勝・高田紀代志訳、産業図書、1999年)、『科学論の実在―パンドラの希望』(川崎勝・平川秀幸訳、産業図書、2007年)、『虚構の「近代」―科学人類学は警告する』(川村久美子訳、新評論、2008年)、『法が作られているとき―近代行政裁判の人類学的考察』(堀口真司訳、水声社、2017年)、『近代の“物神事実”崇拝について―ならびに「聖像衝突」』(荒川直人訳、以文社、2017年)、『社会的なものを組み直す―アクターネットワーク理論入門』(伊藤嘉高訳、法政大学出版局、2019年)、『地球に降り立つ―新気候体制を生き抜くための政治』(川村久美子訳、新評論、2019年)などがある
工藤晋[クドウシン]
1960年生まれ。翻訳家、都立高校教諭。関心領域はカリブ海文学、比較詩学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅがぁ
8
〈西洋人はみな信じていた。戦争などまったくなかったのだ。ただ「他者」だけが古めかしい主観的感情に駆られて戦争状態にあっただけの話だ、と。〉(p.32)……近代化の名のもとに進歩し続ける西洋人=近代主義者達はいまだかつて戦争をしたことがない、とラトゥールは指摘する。何故なら、近代主義者達は、自分達「だけ」が普遍的な「自然」……諸科学的成果、国際的市場原理、政治的正しさ、宗教に対する正当な態度……つまり現実……をとらえることに成功していると信じているからだ。2021/01/31
roughfractus02
6
9.11に面した著者は、欧米の近代主義者たちが世界を一元的に捉え、カントの永遠平和のような普遍的な平和理念を掲げて世界の警察のように振る舞い、自由を害する者たちを回心させるために構造的暴力を振るうことを平和の維持と捉え、自己満足していきた点を批判する。90年代のイスラエルを例に、本書は、様々な抗争に介入して「内なる平和」を維持する欧米の普遍性に対する信念と、平和の名の下に普遍性が構成される過程とを区別する。普遍性の構成過程を辿り直すと、諸世界を一元化しようとする平和への信念が戦争を起こす側面が前景化する。2024/06/27