近代の“物神事実”崇拝について―ならびに「聖像衝突」

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  • サイズ B6判/ページ数 243p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784753103423
  • NDC分類 163.4
  • Cコード C0010

内容説明

「事実」と「物神」を区別する西洋近代の存在論を再検討し、「物神事実」という概念を提示するラトゥールは、「我々は一度も近代的ではなかった」と語る。宗教、科学、政治・芸術の諸分野で主体と客体の関係に再考を促し、実在論と構成主義の対立を脱構築する科学人類学の試み。

目次

近代の“物神事実”崇拝について(魔力を持つ対象、事実としての対象;転移的恐怖;結論)
聖像衝突(なぜ像はこれほどの情熱を掻き立てるのか;聖像破壊についての展覧会;宗教、科学、芸術―三つの異なる像製作の様式;どの対象を選択すべきか;聖像破壊的な所作の分類 ほか)

著者等紹介

ラトゥール,ブリュノ[ラトゥール,ブリュノ] [Latour,Bruno]
1947年生まれ。哲学者・人類学者、パリ政治学院(Sciences Po.)教授

荒金直人[アラカネナオト]
1969年生まれ。慶應義塾大学理工学部准教授。2003年、ニース・ソフィア・アンティポリス大学(フランス)文学・芸術・人文科学部哲学専攻博士課程修了、博士号(哲学)取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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内島菫

31
超越性(聖性)と起源の問題が螺旋状に渦を巻き、それが停滞ではなく様々なものを巻き込んだ運動として描かれている。人は自分の起源を知らない以上、人為と非人為の区別を本来的に生きていないということが、〈物神事実〉崇拝という考察に込められているように感じた。にもかかわらず人為と非人為、構築と実在という二元論や二者択一を行うのは、ホーリズム的な一を目指すためではなく、最初からある二重性や複数性の現れではないのだろうか。2018/01/15

kasim

28
なぜ像は憎まれるのか。「近代」は自身の像を事実という名で呼んだのではないか。そもそも像は排除しうるもの、排除されるべきものなのか。フランスの現代思想は私には難しい。でもこれは明晰と詩情が両立していて楽しく読めた――途中までは。第2部の「恐怖の転移」とそのための「魅力」という策略の辺りでついていけなくなり、残念。ただし、後に続く喫煙家の例による分析はまたとても刺激的。彼は煙草を支配しているのでも、逆に支配されているのでもない。すべてが「自分が制御するものによって幾分か超過され」(143)ている。2025/05/13

roughfractus02

8
植民地主義時代の西洋近代人は、新大陸の現地人が「魔力をもつ対象」を信ずる生活を物神崇拝として批判し、自らは「事実としての対象」を見ているとしてその理性的姿勢を優位においた。が、多数の作用者(アクター)における構成として近代人の事実概念を捉えると、Feitiço(制作する/魅惑される)傾向は、理性的と自認するその姿勢自身にも存在する、と著者はいう。本書は、空想の産物を信じるこの<物神事実>崇拝傾向を宗教、芸術、科学において検討し、想像/事実、制作/実在を対立ではなく、両価的で切り離せない連関として把握する。2024/06/30

プロムナード

5
「創作者の誰もが、自分に何が起こっているのか理解していない」という前書きから刺激的で、あらゆる創作論、キャラクター論の根底を照らしてくれる。自分で構築したものに自分が少し超えられていることは自明であり、被造物の自立性によって創作者もまた自立的存在となる。行為者は主体と対象のいずれかという"近代的"な問い、威嚇的な二者択一に答える必要はなく、我々の実践は「製作」から「実在」へとその断絶をゆるやかに移行する。責任ある固定的な主体などなく、諸存在は相互の関係のなかで自らの位置を保つ。この繋がりを自由と呼ぶのだ。2020/10/13

渡邊利道

4
西洋の宣教師がギニアの神像を人が制作したものが神聖なものだとするのを矛盾だと指摘しながらマリア像には矛盾を感じない、パストゥールが研究室で制作した酵母を自然なプロセスの産物だと考える、インドの小説では啓蒙者が不可触民にタブーを破らせようとして次第に人間性を喪っていく。人間が構成主義と実在論のコンクリフトを、互いを排除しあう矛盾として捉えるのではなく、ある捩れを含んだ同じ平面にあるものとして捉える思考回路の創設/開拓を提起する短く明快な論文で大変面白かった。成程これは相対主義ではないなと。2017/11/25

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