内容説明
今日の金融危機に象徴される資本主義の全般的危機の真相が、“市場”万能主義という神話に基づいたパラドキシカルな帰結であることを論証し、かつ現代のグローバル化世界では、市場経済が政治の位置を簒奪していることに警鐘を鳴らす、本格的な現代文明批評。
目次
序 政治を幻惑する経済
第1章 経済と悪という問題
第2章 自己超越
第3章 終わりの経済学と経済の終わり
第4章 経済理性批判
結び 運命論を脱けて
補遺 時間、パラドクス
著者等紹介
デュピュイ,ジャン=ピエール[デュピュイ,ジャンピエール][Dupuy,Jean‐Pierre]
1941年生まれ。哲学者。スタンフォード大学教授。エコール・ポリテクニク名誉教授。イヴァン・イリイチ、ルネ・ジラールの薫陶を受け、政治哲学から経済哲学、科学哲学に至る広汎な領域で活躍。とくに2000年代以降、「破局主義」の概念をめぐる諸著作によって注目を集める。また、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)倫理委員会委員長を務めてもいる
森元庸介[モリモトヨウスケ]
1976年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。パリ西大学博士(人文学)。東京大学大学院教務補佐員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
21
経済とは瞞着された者たちのゲームでその舞台において各人が瞞着の被害者と同時に共犯者(20頁)。経済はわたした ちをわたしたち自身の暴力から護る(38頁~)。経済にとって自己超越的な未来を作り出す力は、政治が経済に対して 行使する超越から引き出され、これが政治の自己超越力に依存(120頁)。平均人:道徳経済学のケトレー(1796-1874、 149頁)。 2015/04/04
淺野 昌規
2
1回目、読み終えました。日本語版ではなくて、フランス語版です。2013/07/09
wanted-wombat
2
賢明な破局主義論によって、震災後一気に日本で注目を浴びることとなったデュピュイの著。当然タイトルの経済の未来というものが示しているのも楽観的なものではあり得ない。その未来のために著者は、自己超越のモデルというものを提案している。それにしても、最新作だというのに注目度が低い感じがするのは気のせいだろうか。二年もたつと、賢明なとはいえ破局主義からは目をそらしたい、もっと明るい論調が望まれているということだろうか。それがただ現実から目をそらしているだけでなければいいのだが……2013/03/29
白いハエ
1
一見、そこらに有り余る汎ビジネス新書のようなタイトルをしながら、「賢明な破局主義」を標榜する硬派な哲学書。いわゆる「世界」または「政治」とすっかり同一化し、閉塞しつくした経済の未来を破局的なイメージとして表現することを解く。というのも、経済学の処方する合理性に導かれれば、いずれ必ず破綻を迎えることがわかりきっているからである。それを正す自己超越性も外部性もないというわけだから、その破局を協調を促すための未来として設定するしかない。「経済学者」が読むことを全く期待していないようだがさもりなん。2019/08/25