内容説明
忘れものをしてしまい、慌てるトラタとレミに声をかけてきた、おじいさん。忘れもの遊園地の園長だと名乗り、タブレットに「忘れたい嫌な記憶を書きこみ投稿すると、その記憶は遊園地のエネルギーに変わり、忘れものは手に入る」というが―。
著者等紹介
久米絵美里[クメエミリ]
1987年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。「言葉屋」で第5回朝日学生新聞社児童文学賞を受賞。『嘘吹きネットワーク』(PHP研究所)で、第38回うつのみやこども賞を受賞
かわいみな[カワイミナ]
愛知県出身。イラストレーター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
78
児童書、YA。小学6年生のトラタは忘れ物したプリントを受け取る代わりに「忘れたいこと」をひとつ、忘れもの遊園地に投稿してくれと頼まれる。トラタはレミを泣かせたことを忘れる。レミは忘れた月謝袋を受け取る代わりに、ママに投げつけたひどい言葉を忘れた。忘れ物を受け取れて、嫌なことを忘れるのはお得な気がしたが、それがきっかけでレミのママが行方不明になる。「忘れもの遊園地」に迷い込んだママを探すためにレミとトラタとトラタの姉のツバメは遊園地に乗り込む▽結構ダークでシビアなお話でした。記憶術、忘却術の説明むずい。2022/11/18
はる
68
ほのぼのとした異世界物かと思ったら、物語は次第にサスペンスタッチに。もし、過去のつらい記憶を消すことが出来るなら……。どちらが幸せなのかは分からない。それでも登場人物それぞれが痛みを受け入れ、乗り越えていく姿が爽やかだ。記憶の説明は少し難しくて「どういうこと?」と思う箇所もあったが、ハラハラする展開で面白かった。2022/10/21
chiaki
35
言葉屋と同じくちょっとメルヘンチックな展開が苦手でしたが、人間の記憶について考えさせられるテーマ。つらい記憶を忘れても、事実は変えられない。忘れることで楽になることもあるけどそれは現実から背を向けることに他ならないんじゃないか。少なくともレミとトラタの場合なんかは。忘れた方が前向きになれることもあるけれど、受け入れたくない過去の失敗も経験も、今の自分を形成する大事なエッセンスなんだと考えさせられました。『やった後悔よりも、やらなかった後悔の方が忘れない。』迷ったときは思い出して、1歩踏み出してみたい。2023/06/19
anne@灯れ松明の火
25
ネットギャリーで読みたかったが、条件付きのためリクエストできず残念だった。新着棚で出会えた。タイトル、表紙はかわいらしい。が、「言葉屋」の久米さんだから、かわいいだけの話ではないと思っていた。やはり、その通り。忘れてしまいたいことは誰にでもある。でも、本当に忘れていいの? 科学的な資料をもとに、心を揺さぶる物語に仕上がっている。辛い記憶を取り戻し、受け止め、成長していくトラタ、レミ。ふたりが深刻になる分、ムードメーカーの姉・ツバメがいい味を出している。かわいみなさんの絵も優しく、温かくて、とてもいい! 2022/09/11
昼夜
18
忘れたいことと忘れ物を交換してくれる遊園地はある意味夢のテーマパークと思ったらなんか不穏な空気を感じる。単純に覚えていることの方が凄い能力だと褒められるけれど、忘れられることの方がよほど重要だとこの情報社会で生きていると思います。雑多な情報を取捨選択してさほど重要でないものは忘れて自分に影響があるものだけを憶えていく方が効率的で機能的には上手くできているのにいつまでも使い熟す能力が上手くいかないジレンマがストレスでそれを非日常感に溢れてるエンタメのテーマパークで発散するのが楽しい理由がよく解りました。2022/08/31