出版社内容情報
心がぽっとあたたかくなる、安房直子絵ぶんこシリーズ最終巻!
森の中の小さなジャム屋。ジャムの味はとびっきりなのにちっとも売れません。どうしたものかと困っていたら、ある夜、思いもかけないお客さんがやってきて……。鹿の娘と人間が心かよわせる恋のお話です。
内容説明
心がぽっとあたたかくなる、やさしい童話集。森の中の小さなジャム屋。ジャムのお味は、とびっきりなのにちっとも売れません。どうしたものかと困っていたら、ある夜、思いもかけないお客さんが…
著者等紹介
安房直子[アワナオコ]
東京都に生まれる。日本女子大学在学中より、山室静氏に師事。大学卒業後、同人誌『海賊』に参加。1982年、『遠い野ばらの村』(筑摩書房)で野間児童文芸賞、1985年、『風のローラースケート』(筑摩書房)で新美南吉児童文学賞、1991年、『花豆の煮えるまで』でひろすけ童話賞を受賞。1993年、肺炎により逝去。享年50歳
伊藤夏紀[イトウナツキ]
東京都生まれ。2014年第3回MOE創作絵本グランプリ佳作を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Roko
28
青年はジャム作りに熱中し、おいしいジャムを作れるようになりました。 こんなにおいしいジャムだから売れたのでしょ?と聞く雌鹿に「ぜんぜん売れなかった」と話すと、それは「売り方が悪いのでしょう、売れる方法をわたしが考えてきます」と言ってその日は去っていきました。 次の日、ジャムのラベルに貼ったレッテルがダメだから、わたしが作りましょうと、ステキな絵を描いてくれたのです。#安房直子絵ぶんこあるジャム屋の話絵童話 #NetGalleyJP2024/10/01
ぽてちゅう
23
「わたし」は就職するも1年で退職し、ジャム作りのために借金をした。童話にしては現実的な出だしに面食らうも、森に灯った明かりが見えると一変。そこには「わたし」が作ったジャムにうっとりしている牝鹿が。良き理解者である彼女の描くレッテルのおかげで、ジャムの売れ行きは上々。忙しくても一緒なら苦ではなく、熱いロシア紅茶を飲みながら一息つく時が尊い。森で出会った彼女の父鹿は、ゆくゆくは一緒になるあなたたちと「わたしたち」の気持ちを代弁した。彼女が戻るまでいつまでも待ちますと誓う「わたし」。ロシア紅茶が飲みたいですね。2025/01/07
サラダボウル
18
シンプルなストーリーを予想していたら、何度もその展開に驚き心を揺り動かされた。冒頭の「若いころから、人づきあいのへたなわたしでした。大学卒業して、一流といわれる会社に就職しましたものの、ほんの一年でやめました」って、さすがな導入、童話なの?!と混乱する。豊かな描写。森の風、ジャムの匂い、青年と牝鹿。この本の中に入れないかと本気で思う。もうしばらく、この本の中にいたい、と思う。2024/11/24
もちこ
14
会社を辞めた一人の男が、ジャム屋を開く。ところがひとびんも売れず、どんよりした気分でジャム作りのための小屋に戻ると、一頭の牝鹿(めじか)がジャムを美味しそうに食べていた。 短いながらも先が気になる展開が続いて、一気読みでした。 色彩豊かで温かみのある絵と共に、男と鹿の優しい関係に癒されます。 商売で勝つというシビアな大人の世界と、鹿と仕事をするというファンタジックな子どもの世界がバランスよく混ざり合っていて、単なる児童書ではない、不思議な魅力のあるお話でした。2024/09/20
遠い日
9
シリーズ9。大人の鑑賞にも耐えうる豊かな抒情を湛えた愛の物語です。悩める主人公の人知れずの奮闘をちゃんと見ていた牝鹿の心の変化は、まさに恋。主人公の「私」の努力を認め、世に知らしめるためにアイデアを出し、いっしょに仕事をするようになって、ジャム作りにのめり込んでいくふたりが接近することは必然でした。鹿の世界の魔法を垣間見る思いの、父親の鹿のことば。愛の一途さを応援したのでしょう。会えない時間は愛の凝縮された時間。 読み手もじっとひたすら、その時を待ちました。澄んだ純愛に心洗われる感動でした。2024/10/03