出版社内容情報
奇才、藤田新策が描く、江戸川乱歩の世にも奇妙な物語。蜃気楼を見にいった私は、帰りの汽車の中で奇妙な絵をもつ異様な男に出会う。
128年前、仮想空間の少女に恋した男の物語。
内容説明
奇才、藤田新策が描く、江戸川乱歩の世にも奇妙な物語。―128年前、仮想空間の少女に恋した男。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894(明治27)年生まれ、1965(昭和40)年没。小説家。本名平井太郎。三重県名張生まれ。筆名はエドガー・アラン・ポーにちなむ。中学生のころから、黒岩涙香や英米のミステリーを愛読。早稲田大学政治経済学科卒業後は貿易商社員、造船所事務員、古本商、東京市役所吏員、屋台の支那そば屋など各種の職業を転々とする。大正12年、「二銭銅貨」(「新青年」)でデビューし、「心理試験」、「D坂の殺人事件」、「屋根裏の散歩者」など独創的なトリックと斬新な着想による作品を発表。戦後は、ミステリーの普及、発展に尽力し「幻影城」を執筆
藤田新策[フジタシンサク]
1956年静岡県に生まれる。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。以降フリーのイラストレーター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
175
かなり昔に読んだ江戸川乱歩の『押絵と旅する男』が絵本化されたので、読みました。 完全大人絵本、押絵の中身がかなりリアルで、江戸川乱歩の世界観を巧みに表現しています。 http://www.asunaroshobo.co.jp/home/search/info.php?isbn=97847515312042023/05/18
アキ
114
乙女の本棚でも読んだ物語。大人向けの絵本に取り上げられ易いのは、話の中心の押し絵をどう描くかで作者の力量を試せるからなのでしょう。そういう意味では「白髪の老人と、はじらいながらもなまめかしくその老人にしなだれかかる一七、八の美しい娘」という言葉が想像力をかき立てるのでしょう。明治二十八年の浅草で、歌舞伎、浄瑠璃で有名な「八百屋お七」の吉三に恋する乙女お七がモチーフ。絵の中で永遠に若いお七と年老いていく兄の押し絵と旅するこの男こそ、双眼鏡を逆さに覗いた兄本人だったのかもしれないとも読める終わり方でした。2023/06/25
みゆ
74
【昭和の名作散策・番外編】TLで見掛け一目惚れ♡ 思わず図書館リクエストです(笑)雰囲気たっぷりの藤田新策さんの絵、中でも押絵の中の女「お七」が素晴らしい(ほぅ)2023/05/28
たいぱぱ
68
小学生の時に少年探偵団シリーズにドマハりした僕にとって江戸川乱歩は、本好きの基礎を築いてくれた人かもしれません。そんな乱歩原作の古風ななんとも言えないオーラを放ってる絵本を世界 ふしぎ発見!列車の中で不気味な男に声を掛けられ絵を見せられる。その絵の中の女は生きてるように見えた…。その絵にまつわる物語は幻想的であり甘美的であり恐怖でもあり、そして切ない余韻を残してくれます。原作は読んだことありませんが、世界観を壊してないのではないでしょうか。藤田新策さんの絵の相乗効果で忘れられない物語になりそうです。2023/10/19
sin
66
この作品をいままで何度も読む機会があったが、何故か“押絵”と“挿絵”とを混同していたことに思い至った。絵は主観である。作画の主観が僕の持つ主観?いや、はやとちりに客観を上書きして観たときに違和感がいや増して本来の“押絵”が観えた気がした。雰囲気はあるが違うのである。物語の正確な描写に於て齟齬を感じてしまった。“押絵”とは羽子板などに代表される日本の伝統的な手芸だ。なれば描写はもっと立体的であって欲しいと…だがしかし主題はそこではない。乱歩の作品を表現するに於てこの描写こそがその世界を現出させているのだ。2023/07/18