内容説明
イギリス南東部の水辺の地に、一人暮らす風変わりな画家ラヤダー。彼が愛するのは、絵と自然、そして水辺にやってくる渡り鳥だけだった。しかし、ある日…。
著者等紹介
ギャリコ,ポール[ギャリコ,ポール][Gallico,Paul]
1897年、ニューヨークに生まれる。コロンビア大学卒業。デイリーニューズ社でスポーツ担当記者として活躍した後、イギリスに渡り、創作活動に専念。『スノーグース』は、1940年に「サタデーイブニングポスト」に発表され、1941年O・ヘンリー賞を受賞。これが世界的ベストセラーとなり、作家としての地位を確立した。1976年没
バレット,アンジェラ[バレット,アンジェラ][Barrett,Angela]
1955年、イギリスのエセックス州に生まれる。王立美術大学など、3つの大学でイラストレーションを学ぶ。在学中からイラストの仕事を始め、高い評価を得る
片岡しのぶ[カタオカシノブ]
和歌山生まれの岩手育ち。国際基督教大学教養学部卒業。翻訳工房パディントン&コンパニイを夫と共同主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アン
102
イギリス南東部の湿地帯。身体的な特徴から、孤独に暮らす画家の青年ラヤダーは、野生の鳥たちを愛する心優しき人物。傷を負ったスノーグースを抱き、彼のもとを訪ねてきた少女との交流はあたたかくも心に想いを秘め、切なく印象的です。戦争の渦中に巻き込まれると、ラヤダーはヨットに乗り兵士を助けに…。渡り鳥との再会、少女の成長と揺れる心、ラヤダーの男らしさと決意。アンジェラ・バレットの繊細で物語に寄り添うような絵が美しく、寂寥感を一層際立たせているよう。人間と動物、自然界への深い愛情が心を打つ作品です。 2020/01/19
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
101
海辺の町の古い灯台に独りの画家が住んでいた。身体に障害があり町の人々は顔を背けていたけれど、優しく強い心を持っていた。海辺にやってくる渡り鳥は彼の優しさを慕っていた。ある日、ハンターに撃たれて傷ついた一羽の鳥を見つけた少女は、画家に助けを求める。本来はいないはずの鳥、スノーグース。時が経ち少女は美しい女性になった。渡り鳥の季節だけ画家との交流は続いていた。穏やかな日々。しかし海の向こうの戦争が忍び寄ってきて……。儚さの中に強さを持った美しい物語。アンジェラ・バレットさんの絵が叙情を一層引き立てています。2015/08/30
はる
71
哀しくも美しい物語。灯台で孤独に暮らす画家のもとに一人の少女が現れる。鳥たちと共に育まれる二人の静かで穏やかな関係。だが戦争によってその安らぎは終焉を迎える…。アンジェラ・バレットの寂寥感溢れる絵は物語にピッタリ。少女の素性についてはほとんど語られていないけれど、色々と想像してしまいます。2018/09/17
みうか
69
新潮文庫と迷いましたが、アンジェラ・バレットさんの絵に強烈に引き寄せられてこちらを手に取りました。“寒い潮の匂い、そこに漂う寂しさ、永遠に変わらぬ湿原の佇まい、そこに棲む鳥たちの暁の飛翔…”。じりじり胸が焼かれる読後感でした。哀しさや侘しさの中で一瞬の希望を垣間見てしまった時の、あとに残るやるせなさ。こんな気持ちになるくらいなら、出会わなければ良かったのに。けれどやっぱり愛してる。そんな想いが風に乗って運ばれてくるようでした。あらゆる物を破壊してゆく戦争が唯一手を出せないものが静かに描かれています。2020/01/08
雪月花
58
アンジェラ・バレットの絵に惹かれて図書館で借りましたが、こんなに心に刺さる本だったとは・・1930年、イギリス南東部エセックスの灯台に住み着いた男性のところに、傷ついたスノーグースを持って現れた少女。背中に瘤があり鳥のような手首を持つ容姿から世間に疎まれていた男性の心に灯をともした少女とスノーグースに影を落とす第二次世界大戦。鳥にも心はある、そして人の魂が鳥に宿ることもある、と思えた美しくも悲しいお話でした。2022/04/05