出版社内容情報
はじまりは小さな種だった。貧民街のゴミ溜めが生まれ変わる……人種、年齢の異なる13人のモノローグで綴る「天の楽園」創造の記。 中学生~一般
内容説明
はじまりは、小さな種だった。さまざまな人種がうずまく貧民街の一角、だれも気にとめなかったゴミ溜めが、すこしずつ変わりはじめる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
244
貧民街の空き地でベトナム人の少女が種を蒔いてから畑になる話!短い話の中で小さな喜び、連帯感、和、絆、仲間、ちょっとした友情のような芽生えといったものが濃密に凝縮された作品で、読み終えた後の読後感はほっこりしました。人によってはウルッとしちゃう人もいるんではないかと思います。読了後、V6の『WAになっておどろう』を聴きたくなりましたね。残念ながらうちにはV6のCDがない!V6のCDを購入して、聴きながら再読したい作品です。2016/09/30
やすらぎ
215
都市に人は集まるのに、人と人が繋がらない社会。目の前のごみ捨て広場を巡る物語。その一角を耕して種を植えて大切に育てる。手のひらに種を乗せてにこやかになる。その瞬間は心穏やかになる。そこに関わる人たちは、自然と前向きになれる。…土の香りから昔を思い出す人もいる。やってみると面白くてね。毎日、何か新しいことに気付くんだ。蕾が出て花が咲いて粒が出来てね。周りの人が親切にコツを教えてくれるんだ。楽しいだろう。言葉が通じなくても心は同じさ。…冬が来ると目の前の畑には土しかない。それなのに、春はきっと必ずやってくる。2021/07/27
美紀ちゃん
136
ゴミだらけの空き地に、女の子が豆の種を蒔いた。 近隣の人がドラッグを隠したのか?と疑い掘り返してみるとそれは豆で他人の日記を見てしまいページを破ってしまったような気持ちになった。慌てて掘り返した豆をそっと土に戻して水をあげる。始まりはそんな感じ。畑に蒔いたものを世話している姿を見た人が、癒された気持ちになり、希望を持ち、自分も働きたくなり、ゴミの空き地は、立派な畑に変わっていく。植物の世話、土いじり、働くことって、心に良い影響を与えるのかも。 そこに出てくる登場人物の考え方が爽やかになっていくのが良い。2021/04/05
nico🐬波待ち中
119
空き地の土を掘り返して耕し、種をまく。水やりしたり雑草を抜いたり肥料をやったり。初めは9歳の少女が亡き父を思い、一人で始めたこと。ぜったい大きくしてみせる。少女のささやかな願いはやがて様々な人達に繋がっていく。国も肌の色も言語も年齢も違う。けれどみんなの願いは一つ。芽が出て葉が伸び、花が咲き種ができる。その種をまた土にまく。次の年も、また次の年も。そうした自然の繰り返しにより、みんなの畑は集いの場となる。忘れてしまっていた大事なことを、じわりじわりと思い出させてくれるような、清々しい気持ちになれた物語。2020/01/02
れみ
117
アメリカ、クリーヴランド(オハイオ州の工業都市)の貧しい人々が暮らす街で、ゴミ捨て場になっていた空き地に、ある少女がまいた小さな種をきっかけに始まる、人種も年齢も性別も様々な人々の物語。作る人も見る人も、そこにできた畑を通して誰かと繋がっていく様子に心温まる。民族や人種とか、世界には複雑な問題が溢れているけど、相手を知って、名前や家族のある自分と何も変わらない存在だっていうことを知るだけでも良い方向に向かうことがある気がする。2019/11/15