内容説明
困難のただなかで、それでも喜びと光を求め続けた伝説の詩人。優しくひたむきな言葉がよみがえる。二冊の詩集『志樹逸馬詩集』『島の四季』所収の全詩に加え、遺稿から未公刊の詩を収録。詳細な年譜と若松英輔による解説を付した決定版。
目次
『島の四季』(春;水仙;畑を耕つ ほか)
『志樹逸馬詩集』(生命;生命あるものは;すべて神様に ほか)
未公刊詩選(雲雀;(お月さん)
拳 ほか)
著者等紹介
志樹逸馬[シキイツマ]
1917年山形県生まれ。13歳でハンセン病を発病、多磨全生園(東京都)に入る。その後、長島愛生園(岡山県)に移り、養鶏の仕事のかたわら17歳頃から創作を始め、生涯を通して園内外の雑誌に作品を多数発表。25歳キリスト教の洗礼を受ける。1959年没、享年43。ノートおよそ60冊の遺稿を遺す
若松英輔[ワカマツエイスケ]
詩人・批評家・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。1968年生まれ。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて三田文学新人賞、2016年『叡智の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』にて西脇順三郎学術賞、2018年『詩集 見えない涙』にて詩歌文学館賞、『小林秀雄 美しい花』で2018年角川財団学芸賞と2019年蓮如賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐっちー
14
若松英輔さんは、私に心の指針となる言葉を多く授けて下さる批評家だ。以前、志樹逸馬の詩と出会わせてくれたのも若松さんだ。そして読み終わることが出来ない本を大切にすることを教えてくれたのもまた、若松さんだ。この詩集は一通り目を通すだけで数ヶ月かかった。すっと体に染みた水のような作品もあれば、どうしても飲み込めない石のような作品もある。それで構わない。今は読めなくてもいずれ読めるようになるかもしれない。それまで私は耕す。2020/02/22
チェアー
10
素朴な言葉でつづられた詩。その素朴な自然や恩寵は本当は奇跡的なものであることに、毎日、すべての瞬間で見ているはずのわたしは気づかない。心の目は閉じ、心の耳は塞いでいるから。巻末の年譜が思いがこもって素晴らしい。2020/05/21
メイロング
5
絶対だれにも教えてくない詩集。激しい目立つ言葉はどこにもないけど、どこからでも、読むものとの間に化学反応が起きて、芽が出てどんどん伸びていくイメージ。どの詩がぐっとくるか。読むたびにきっとちがう。静かな部屋で耳を澄ませて読んでいたい。2020/09/01
yumicomachi
5
困難ななかにあって、日常をいつくしみ、心の底から汲んだ詩の言の葉を書きしるすこと。その言の葉が時代を超え、状況を超えて読者の魂をふるわせ癒すこと。そんな小さな奇跡を大きく感じさせられる詩集。著者は1917年生1959年没。ハンセン氏病で13歳より隔離生活を送った。25才で受洗してクリスチャンになる。だが栞文に込山志保子が書いているように、「ハンセン病詩人」や「宗教詩人」と定義してしまうとこのゆたかな詩世界の可能性を狭めてしまうだろう。込山志保子はこの本の年譜も担当している。若松英輔編。2020年1月刊行。2020/04/03
はるたろうQQ
3
志樹逸馬を初めて知ったのは鶴見俊輔からだった。「曲がった手で」や「大空を仰ぐとき」が引かれていた。何度読んでも心が動かされる。土の器である我が身に激しく注がれる生命の不思議さ。生命は非常に脆く危ういものでもある。詩人は病気によって苦しみ、生命の危機にも晒されているが、自分でも驚く程に迸り出る生命を高らかに謳う。今回その他の詩も読んだが、「ひとり部屋に」「教会への道」なども良かった。光溢れる透明な静謐さと、同時に「大空を仰ぐとき」にも表現されている、自分の生命が万人と繋がっているという感覚がとても心地よい。2020/07/30