内容説明
別の世(アナザワールド)への絶えざる郷愁と渇望。現実からの逃避か、神に代わっての世界の創造か―不朽の名作『ナルニア国物語』『指輪物語』『ゲド戦記』を渡辺京二が読み解く。
目次
第1講 読書について
第2講 『ナルニア国物語』の構造
第3講 C.S.ルイスの生涯
第4講 トールキンの生涯
第5講 中つ国の歴史と『指輪物語』
第6講 『ゲド戦記』を読む
第7講 マクドナルドとダンセイニ
著者等紹介
渡辺京二[ワタナベキョウジ]
1930年京都生まれ。大連一中、旧制第五高等学校文科を経て、法政大学社会学部卒業。評論家。河合文化教育研究所主任研究員。著書に『北一輝』(ちくま学芸文庫、毎日出版文化賞受賞)、『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー、和辻哲郎文化賞受賞)、『黒船前夜』(洋泉社、大佛次郎賞受賞)、『バテレンの世紀』(新潮社、読売文学賞受賞)など多数がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
90
渡辺さんによる子供向けのファンタジーについて熊本の本屋さんで講義された内容を2冊の本にまとめられたものです。対象は中学生以上なのでしょう。この上巻ではわたしが以前に読んだ本(「指輪物語」「ゲド戦記」)の紹介があり、興味を持って読むことができました。また話し言葉であることも(それが不満の方もおられると思いますが)理解を助けてくれます。最初に「読書について」という前置きがありご自分の経験などを語られています。上記の他に私が読みたいと思っていた「ナルニア国物語」についても詳細な解説がありました。2023/12/04
アナーキー靴下
58
書店で行われた講義をまとめたもの、とのことだが、これがすこぶる面白い! 以前読んだ『私の世界文学案内』同様、知的で紳士然とした様を想像しつつも、造詣深くも興が乗った雄弁さはまるで落語のよう。落ちや滑稽さがあるわけではなく、あくまで話術の巧みさ、の話だけど、何にせよ引き込まれる。聞き手を常に意識している語りは、当然独り言ではないし、一方的な演説でもない。そして恐らく、著者は語ることすべてがその場で即座に理解されないことを十分承知している。理解されることを重視したらただの自己紹介になってしまうのだろうと思う。2025/03/13
帽子を編みます
46
読友さんの感想に惹かれて読みました。『ナルニア国物語』、『指輪物語』『ゲド戦記』絶対面白いでしょう。語り口がすんなり入ってくるようで毎晩寝る前の楽しみになりました。しかし、C.S.ルイスの生涯、義理の母とも言える女性との関係、私は同意出来ませんでした。それと『ナルニア』が読みたくてたまらなくなりました。マクドナルドとダンセイニ、荒俣宏訳の本を並べていたのを思い出します。『ペガーナ』のあの独特の雰囲気、好きです。2025/04/13
南北
39
あの渡辺京二がファンタジー論ですか?と思って読むことにしました。「ナルニア国物語」のC・S・ルイス、「指輪物語」のトールキン、「ゲド戦記」のル・グインやマクドナルド、ダンセイニが取り上げられています。文学として語ろうとしているので、作家の生涯が比較的詳しく語られています。上記の作品が既読だという人には意外な側面を知ることができますし、未読だという人には作品を読むきっかけになるのではないでしょうか?ファンタジーなんて大人が読むものじゃないなんて「大人」になれていない証拠かもしれませんよ。2019/11/17
ワッピー
34
渡辺京二さんの2冊目。熊本市の橙書店にて2019年1月から月二回ずつ開催された講義録。88歳で、もう浩瀚な書は書けないものの、過去に読破された作品について語るならということでファンタジーの世界を網羅。「ファンタジーと言うとすぐ現実逃避だと反応する人がいます。(中略)そもそも現実というのは逃避して然るべきものです。いい歳してそんな人生の基本事実もわからないのでしょうか』という痛棒に激しく同意!上巻ではルイスとトールキンを主に取り上げ、あのシルマリリオンを含む浩瀚な中つ国以前の歴史をカバー。上巻目次は以下 ⇒2025/02/28