内容説明
経済成長、都市化、貧困、差別、冤罪―時代の折々に生じる凶悪殺人事件の内奥を探る旅。殺人者の郷里、生家、殺害現場、幼馴染みなどを訪ね歩くことで見えてきた日本の歪んだ相貌とは。
目次
第1章 現代の八つ墓村
第2章 北関東犯罪黙示録
第3章 東京ノースエンド
第4章 北海道に渡ったネパール人
第5章 ズーズー弁と殺人事件
第6章 林眞須美と海辺の集落
第7章 宗教と殺人
第8章 戦争と殺人
第9章 差別と殺人
著者等紹介
八木澤高明[ヤギサワタカアキ]
1972年横浜市生まれ。ノンフィクション作家。写真家。写真週刊誌「FRIDAY」の専属カメラマンを経てフリーに。『マオキッズ―毛沢東のこどもたちを巡る旅』で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
63
「付け火して~」の事件から、オウム、和歌山カレー、カニバリズムと有名事件の現場や犯人の出身地などを巡った一冊。北海道のネパール人による妻子殺人ルポとかカレー事件関係者の取材とか、読みどころは多く一気に読まされる。ただ犯人の生家を訪ねる等は先日読んだ『加害者家族』とかを思い出すとなんだかなあという感想であるし、事件の背景や犯人の心情は憶測の上に憶測を重ねて無理があるように思う。その憶測もマスコミ的というか画一的というか。ただ事件に関係しているというだけで、その場所が陰鬱極まりないように思えるのは面白い。2018/01/20
鷺@みんさー
55
正直、もっと物見高い内容だと思っていた。某ナックルズのような、「日本で有名な殺人事件が起こった場所を訪ねて、あれこれ猟奇的な表現を交えて説明する」的な。実際は違った。ダークツーリズムの本であるのは間違いないのだが、「果たして彼らを殺人へと駆り立てた背景とはなにか」「自分にも、同じ条件がそろえば殺していたのではないか」という、どちらかというと殺人者寄りの視点で描かれていて、各扉の写真は意図的かと思うほど墨のように暗い。他者への不寛容、閉鎖的な村、差別や貧困、そして宗教。興味深く読み終えた。2018/03/30
あやの
37
筆者は「殺人犯がその事件を起こしたのは、出身地の風土や文化、成長過程が少なからず影響を及ぼしている」という思いからこの本を作り上げた。様々な殺人犯の出身地を訪れてその土地の雰囲気を確かめ、事件や犯人の幼い頃を知る人物にインタビューする。全体的に重苦しく陰鬱な作品だ。人物像や風土を冷静に分析するルポではなく、筆者の抱く想いを記したエッセイとして読む作品だ。なぜその事件を取り上げたのか?とか、もう少し掘り下げて欲しい部分とかはあるが、日本の風土をこういう風に見ることもできるんだと思える本だった。2018/07/29
澤水月
34
独自に遺族の信頼を得て敢行されたネパール1ヶ月半の取材、同国の賎民で累犯の上、既婚だった男による北海道の新妻と乳児殺害のルポが圧巻。基本的に現地に足を運び関係ある土地の歴史に照らし合わせ独自見解が述べられるがかなりクセがある見方も多い(熊本八代で麻原のことを聞きつっけんどんな対応した人を親戚だろうと決めつけるなど)2017/10/07
たまきら
33
売春島に続き読んでみた。タブー、裏社会といった作者のキーワードが見えてくる。他の著作と同様なぐりこみ的な感じで、良く言えば現場の臨場感が伝わってくるけれど、詳しいことを知らない人に取材した場合は深みが感じられない。取材相手の言葉は臨場感があり、事件やルポのライターさんだなあ…と感じた。コンプレックス、恨み、羨望。愚かさ、傲慢さ。そして失うものはない者の破壊行動。ただただ空しい。2019/02/26