出版社内容情報
「戦争の癒えない傷」の実態に迫るノンフィクション。イラク戦争から生還したものの、重いPTSDに苦しみ毎年250人以上が自殺する米軍の兵士たちとその家族の苦悩に密着した。あの戦争で一体何があったのか。内田樹氏推薦!
内容説明
本書に主に登場するのは、アダム・シューマン、トーソロ・アイアティ、ニック・デニーノ、マイケル・エモリー、ジェームズ・ドスターの五人の兵士とその家族。そのうち一人はすでに戦死し、生き残った四人は重い精神的ストレスを負っている。妻たちは、「戦争に行く前はいい人だったのに、帰還後は別人になっていた」と語る。戦争で何があったのか、どうしてそうなったのか…。イラク・アフガン戦争から生還した兵士200万のうち、50万人が精神的な傷害を負い、毎年250人超が自殺する。戦争で壊れてしまった男たちとその家族の出口なき苦悩に迫る衝撃のレポート!
著者等紹介
フィンケル,デイヴィッド[フィンケル,デイヴィッド] [Finkel,David]
ジャーナリスト。「ワシントン・ポスト」紙で23年にわたり記者として働き、2006年ピュリツァー賞受賞。その後イラク戦争に従軍する兵士たちを取材するために新聞社を辞めバグダッドに赴く
古屋美登里[フルヤミドリ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
413
明日のベテランズ・デーに向けて、これ以上相応しい一冊もあるまい。イラク戦争の帰還兵に多い、PTSD、身体障害、家庭崩壊、自殺をドキュメントした作品。兵士やその妻の苦悩に満ちた声が、生々しく読者にのしかかってくる。前線に出る兵士というのは、そもそも若かったり生い立ちに問題があったりということもありそうで、その辺の関連もあるのかなと。夫の現役時代に知り合った人たちにしばし想いを馳せた。作中のアダムと彼の妻、ググってみたら後年離婚したとのこと、現実はどこまでもシビアである。映画化された作品もぜひ鑑賞したい。2018/11/10
ケイ
142
犯罪についての小説やノンフィクションは、涙なしでは読めないし心を激しく揺さぶる。しかし、この作品では、涙は流れず、ただ怖くなった。闇に取り込まれないようにしなくてはと自らに言いながら読んだ。挟まれる写真は、何も知らなければ普通のショットに見えるだろうか。写真たちは内容と化合して何かを生み出している。極めつけは、表紙の写真。そのおぞましさに気づいたのは3分の1くらい読んだとき。これは地獄だ。地獄にいたら逃げ出したくなる 。生きていて地獄を見るなら 自死は逃げ場になるのかもしれない。2019/05/16
harass
113
イラク戦争に従軍した米陸軍の部隊に取材した著者(その時の本は『兵士は戦場で何を見たのか』)が多くの帰還兵が帰国後に苦しんでいることを知り書かれたノンフィクション。多数の兵士たちやその家族などを徹底的な三人称視点で描かれている。悪夢のような戦場で肉体的にも精神的にも傷つき帰国後の米国社会で愛していたはずの家族に暴力をふるい自殺する彼らと残された家族、彼らを支える軍の施設のスタッフなど。小説的な語り口のせいか、カーヴァー、ティム・オブライエンなどを連想する短編のような味わいがある。これはおすすめ。2019/08/15
starbro
95
想像通りの内容でしたが、読み進むにつれ大変辛くなりました。PTSDの元兵士の家に普通に銃があるなんてゾッとします。入隊時に186㎝あった身長が除隊時に93㎝(両足切断)になって戻ってくるなんて悲しすぎます。自称世界の警察USA(実は自国の利益しか考えないならづ者、テロ支援国家)の大統領や軍幹部は、兵士がPTSDで自殺しようが惨たらしく戦死しても消耗品で兵士の何%という数字でしか考えていないと思います。日本でも自衛隊は自殺が多いと聞きますが、今回の法案が成立したらどうなるのでしょうか?安倍総理必読の書です。2015/08/24
どんぐり
93
アフガニスタンとイラクに派兵された米兵はおよそ200万人。そのうち50万人がいまもPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に苦しんでいる。それにより、アメリカでは毎年250名以上の兵士が自殺している。この本には、アダムとサスキアの夫婦を中心に5人の兵士とその家族が登場する。自分の赤ん坊を抱いていたのに気づかずに床に落としてしまったり、アルコールで酩酊状態に陥って記憶を失ったり、フラッシュバックに悩まされ、怒りの感情を爆発させ妻に暴力をふるったり、銃やナイフを身の回りに置いて自傷行為に走っ2017/09/26