内容説明
奴隷制時代の研究では、南部社会を動かしたのは男性であったとされてきた。白人であっても、女性は市民(市民権を行使する構成員)としては「社会死」に近い状態であったというコンセンサスが、学術界にもあったのである。このコンセンサスに対して、著者は本書を通じて異議を唱える。すなわち、奴隷を所有する家庭に生まれ、幼少時から自分の奴隷を所有していた白人女性は、奴隷制度の維持・発展に寄与した「共犯者」であった。「彼女たちにとって、奴隷制度は自らの自由を意味した。奴隷経済に積極的に関与して投資をし、黒人の隷属を維持することを通じて、自分たちの自由を切り拓いた」
目次
序章 奴隷市場の女主人
第一章 女主人の育成
第二章 「あたしゃ奥様のもんだ」
第三章 「ご主人様ってぇのは、奥様のこった」
第四章 「彼女はもっといい市場を見つけられると思っていた」
第五章 「乳母、売り出し中/貸し出し中」
第六章 「奥様は奴隷を売り買いしてご満悦だった」
第七章 「奴隷たちは自由になって去っていった」
第八章 「前代未聞の強奪」
終章 失われた家族の絆、「失われた大義」
著者等紹介
ジョーンズ=ロジャーズ,ステファニー・E.[ジョーンズロジャーズ,ステファニーE.] [Jones‐Rogers,Stephanie E.]
Ph.D(Rutgers,The State University,New Jersey,2012)。現在、カリフォルニア大学バークリー校歴史学部准教授。本書の萌芽となった博士論文は、2013年、アメリカ歴史家協会(OAH)が最優秀博士論文に授与するラーナー=スコット学位論文賞(アメリカ女性史部門)を受賞。本書自体の評価も高く、2019年には、初期アメリカ共和国歴史家協会賞(単著出版部門)および、ロサンゼルス・タイムズ文芸賞(歴史部門)をアフリカ系アメリカ人として初受賞。アメリカ南部の奴隷制、女性と法と所有権に対する関心を、現在ではさらに敷衍・発展させ、環大西洋国際奴隷貿易の考察を含む新書を複数冊企画中
落合明子[オチアイアキコ]
筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士課程中退。博士(文学)。現在、同志社大学グローバル地域文化学部教授。専攻はアメリカ黒人の歴史と文化
白川恵子[シラカワケイコ]
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(文学)。現在、同志社大学文学部教授。専攻はアメリカ文学、文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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