内容説明
人道支援、研究、外交に携わる34人の執筆者が、現地の“いま”から過去と未来を読み解く。
目次
1 ガザ情勢から見るパレスチナ/イスラエル(ガザの風景―潮風が香る街道の町;「封鎖」以前のガザ―うち続く反開発と人びとのスムード;封鎖下の生活―若者の志を打ち砕く現実 ほか)
2 日常のパレスチナ/イスラエル(東エルサレムと人びとの日常―支配の侵食に抗うこと;西エルサレムの人びとと生活―弦の橋が映し出す街の姿;イスラエル国籍のパレスチナ人―「1948年のアラブ人」の日常 ほか)
3 日本や世界との関わり(UNRWAの活動と日本―70年続いてきた支援;国際NGOとパレスチナ社会―人びとの暮らしに寄り添って;ガザの商品を扱う―フェアトレードの試み ほか)
著者等紹介
鈴木啓之[スズキヒロユキ]
東京大学中東地域研究センター・特任准教授。中東地域研究
児玉恵美[コダマエミ]
東京外国語大学総合国際学研究科博士後期課程。専門はレバノン地域研究、難民研究。レバノン内戦(1975‐1990)をめぐる家族の記憶を、故郷観、祖先観に着目して研究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
64
ニュースでは報道されないパレスチナやイスラエルの現状を伝える一冊。故郷を奪われ、インフラは破壊され、再建も見通せない不安定さ、日常を脅かされ、未来は見えず、逃げることもできないパレスチナに対する「ここで死ね」と言わんばかりの現状に絶句。そして決して二項対立ではないが故の現状を知らない/知ろうとしない事が現状を悪化させている事に加担している。LGBTQをプロパガンダとする事への批判、医療従事者が仕事を得るために戦争を心待ちにするという悪夢。イスラエルに住むパレスチナ人の置き場のなさを訴える雨雲さんが書いた章2024/10/23
かおりん
23
2024.5.15初版。2023年10月7日パレスチナ人の戦闘員がガザ地区に攻撃を開始する。ガザでは過去に戦闘が繰り返されていた。ハマスの実効支配、イスラエル軍の強硬姿勢で多くの一般人が被害をうけたこと、今も国際社会が支援し行末を見守っている。コラムの「14歳のパレスチナ難民が日本に伝えたこと」「日常という抵抗、文学という抵抗」が心に響いた。『私が死なねばならないなら それを希望にしてほしい 物語にしてほしい』この本を読んで知らなかったこと、見えてなかったことが分かってよかった。2024/07/27
鯖
16
「ガザでまた紛争が起こるのを待っている。そうすれば多くのNGOや国連がまた雇用してくれるから」2023年10月にガザに住まう方がおっしゃった言葉なのだそうである。医療等の資格があっても働き口がないガザでは紛争が終わっても封鎖が続く限り生きていくのが難しい。紛争で人々は負傷し死に後遺症で苦しむが、紛争が起こらなければ国際社会からの援助が終了し、仕事が見つからない。結果としてガザに住む人々は紛争を待ってしまう。…この記述が一番キツかった。停戦と封鎖解除と平和とすべてが揃わなければどうにもならない。2024/09/07
瀬希瑞 世季子
6
ガザの女性の死因の1位は乳がん、必須医薬品の29%は慢性的に在庫がなく、医療機器も十分に揃ってない。放射線治療機器はイスラエル軍から「軍事転用可能」なものとしてガザへの搬入は許可されてなく、治療が必要な場合はガザの外を出て東エルサレムか西岸の病院で治療を受けるしかないが、出域の許可申請は時間がかかり、返事がないことも多い。末期がんの患者が出域の許可を待っている間に死亡したケースもある。2024/07/03
英
3
今月UNWRAの活動が禁止されてしまう可能性が高いと知り、何かできることは…と思い立ち読了。 とりあえずは安全で自由な環境ではあるが、閉塞感を感じているからなのか、ガザ地区に想いを馳せずにはいられない。対立する関係において、必要なのは会話であり、互いを理解しようとする姿勢が大切と文中にもあった。国と国の対立に会話と理解が芽生えることを願わずにはいられない。また、身の危険にさらされる厳しい環境にあっても、楽しく日々を送ろうとしている人たちがいる、学ぶべきことが多い一冊だった。2025/01/13