出版社内容情報
安倍元首相銃撃事件を機に社会で注目されるようになった「宗教二世」問題。家族と宗教という二重のブラックボックスの中で「見えない存在」にされてきた一人一人の苦難を丁寧に聞き取ると同時に、国や自治体、医療機関が過去にどう対応してきたかを検証する満身のルポ。
内容説明
私たちは透明な子どもだった。安倍元首相銃撃事件を機に社会で注目されるようになった「宗教二世」問題。家族と宗教という二重のブラックボックスの中で「見えない存在」にされてきた一人一人の苦難を丁寧に聞き取ると同時に、国や自治体、医療機関が過去にどう対応してきたかを検証する満身のルポ。
目次
序章 二発の銃声から(「彼」は近くにいた;自由民主党との蜜月)
第1章 深く残る傷痕(「神の子」のアイデンティティ―チュソンの場合;異国で破れた「祝福結婚」―貴子の場合 ほか)
第2章 教義と虐待(苦悩する児童相談所;信教の自由とは何か ほか)
第3章 誰が輸血を拒むのか(ある男児の失血死;震える手で同意書―大地の場合 ほか)
第4章 オウムの教訓はどこへ(透明な存在だった―咲の場合;息子を引きずり込んで―恵美子の場合 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読特
38
皆と遊べない日曜日。自由恋愛の禁止。些細な反抗でむち打たれる。輸血の拒否で命の危機に晒される。親の出家で隔離させられ、不衛生な環境でまともな教育を受けられずに育つ。親の信仰に振り回される子どもたち…一方、宗教は文化とも密接な関係にある。お盆の墓参、クリスマスパーティ、初詣。風習は自我の形成に深い影響を与える。憲法でも保証されている信教の自由。何がよく、何がダメなのか、法で線を引くのには限界がある。行き過ぎが起きないよう関心を示し、良識で歯止めができるようにする。子どもが健全に育つ環境を作るのは大人の使命。2025/01/02
Gamemaker_K
9
いや、何を信じるとか人の勝手なのだが、たくさん選択肢を与えた上で選び取ったものでないとゆがみが生じないか?なので子どものうちは親であっても信仰とは切り離した普通の日常生活を送らせてあげるべきだと思うんだが(そもそも普通の日常生活という概念はないのだろうが)。あと、必要以上に他人を巻き込まないでほしいということと、命に関することを最優先にすべきことは徹底してほしい。(加えて何をどうやっても納得できないのが、必要以上にお金がかかることだ。そりゃ多少のお布施は必要だろうが、金額も納付回数も度が過ぎていないか。)2024/05/23
てくてく
7
毎日新聞が統一教会、エホバの証人、オウム、天理教などの宗教二世を取材したもの。家族円満を願ったことが信仰のきっかけだったとして、しかしその信仰によって家族が崩壊してしまうその矛盾ないしは悲劇において、自ら信仰を選んだわけではなく、物心ついた時から教義に従うことが当然とされる環境で育つ宗教二世については、やはりある程度の年齢までは信仰を強要されないことによる信仰の自由が保障されるべきなのだろう。オウム事件で子どもたちの問題をもっと強く認識して国が動いていれば状況は変わっていたのだろうか。2024/10/27
🍭
7
図書館本、2024年発行。宗教による間接的な児童虐待とその経過について真摯に向き合って生まれたルポタージュ。第一章では統一教会、第二章では宗教二世(主に統一教会+天理教)、第三章ではエホバの証人、第四章ではオウム真理教、それぞれの宗教二世三世が抱え込んでいた悩みや不満感を拾い上げ社会問題として再考すべしと問題提起をしている。毎日新聞取材班六名による取材姿勢は真摯で、社会課題としての「カルト宗教」とはなにかに留まらない。無垢な児童がその後、(特定宗教信者ということで)差別されてきたことにも焦点を当てている。2024/05/20
くるた
4
親の信条に基づいて子育てがなされるのは当然として、後に子どもが自分で宗教を選べる環境にあるかどうか。宗教で結びついていなくても、家族関係が継続できるか。肉体的・精神的・経済的に、別ルートに進むことが出来ない状況に追いやられていないか。行政含む第三者の動きは、後から思えば救い出すチャンスはあったのに活かせず、事がおこると準備不足で対応しきれず現場が疲弊し、落ち着いてからも継続的な検証がなされないまま。そして忙しい中でどんどん忘れていく。一般の第三者は何ができるの。2024/07/03