内容説明
悪意の有無に関係なく存在する偏見、バイアス。それがいかにして脳に刻まれ、他者に伝染し、ステレオタイプを形作っているかを知ることなしに、人種差別を乗り越えることなどできない。米国の学校・企業・警察署の改革に努める心理学者が解く、無意識の現実とは。
目次
1 私たちの目に映るもの(互いの見え方―認知とバイアス;何が育むのか―カテゴリー化とバイアス)
2 自らをどう見出すか(悪人とは?―警察とバイアス1;黒人男性―警察とバイアス2;自由な人の考え方―刑事司法とバイアス;恐ろしい怪物―科学とバイアス)
3 抜け出すための道はあるか(ホームの快適さ―コミュニティとバイアス;厳しい教訓―教育とバイアス;シャーロッツビルの出来事―大学とバイアス;最後に得るもの、失うもの―ビジネスとバイアス)
著者等紹介
エバーハート,ジェニファー[エバーハート,ジェニファー] [Eberhardt,Jennifer]
スタンフォード大学心理学部教授。全米科学アカデミー、米国芸術科学アカデミーに選出され、フォーリン・ポリシーの「世界をリードする100人の思想家」の一人に選出。人種問題の研究における世界の第一人者の一人として知られる
山岡希美[ヤマオカキミ]
翻訳家。16歳まで米国カリフォルニア州で生活。同志社大学心理学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒデミン@もも
44
誰でも無意識に他者に対して目には見えないバイアスを持っている。統計や実体験に基づいた心理学者である著者の話は、バイアスが可視化されてわかりやすい。彼女の五歳の息子が十数年後自分がバイアスの対象になることを悟る。黒人だからということだけではないと想像するが、白人至上主義に詳しくないからわからない。日本でも肌の色は同じでも同様のバイアスはある。2021/01/30
テツ
19
対象と接し深く知るうちに嫌悪感を抱き差別が始まるのではなく、そもそも嫌悪感を先に(無意識に)刻まれた状態から差別感情が約束された交流が始まる。人間がそうした心の流れからは逃れられないとしても、皆が自身の内側で起きている無意識のバイアスを自覚していかなければそうした愚かで悲しい交流を減らすことはできないんだろう。他者を見るとき、評価するときに、自分の尺度や主義主張によるバイアスは必ずかかる。カテゴライズとラベリングを無意識に行っていることをまず自覚しよう。2021/06/06
カイワレ大根
8
差別や偏見についての多数の研究が参照され、著者の体験ととに人種に関するバイアスの問題意識が論じられている。特に人種に関する差別について挙げられているが、年齢や性別に関しても同様の問題が常に起こっている。タイトルには無意識のバイアスとあるが、差別をしないと信じている人にもバイアスはかかり、無意識的な偏見に支配されている。特に恐ろしいのは、自らの偏見に気がつかない事なのだろう。本書を読む事で少しでも自分の信念と行動を振り返り、問題について目を向ける事ができたのだと思いたい。2021/02/06
oyoide
2
アメリカの人主差別を中心に、差別を起こす偏見はどのように遍在するのかが具体的に書かれている。これらは、研究者である筆者は自身らの組織を「シンクタンク(頭脳集団)」ではなく「ドゥタンク(実践集団)」であると示されている通り、筆者自身の実体験も書かれており、当事者目線がよく分かる。更にこれらの差別は、移民問題や軍人の就労者不足問題にも関わることが分かった。差別は、被差別側も差別を増幅してしまうという、体験や教育の連鎖も見落とせない。 高史明氏による後書きで日本での差別に換言されており、理解の補完となっている。2022/02/27
hiro 808
1
良質な映画を観た後のような、深く考えさせられる読後感。エピソードと学術的研究結果の両方が含まれていて説得力も高い。2021/09/23