内容説明
20世紀最大の哲学者ハイデガーはなぜナチスに加担したのか?「黒ノート」の「反ユダヤ主義的」覚書の真意とは?後期の「存在の思索」に秘められた政治的メッセージとは?『存在と時間』以後のハイデガー後期思想を徹底解明!
目次
第1章 学長期の立場(「黒ノート」における超政治;学長就任演説「ドイツ大学の自己主張」 ほか)
第2章 ナチズムとの対決(ナチ・イデオロギー批判;「黒ノート」における「反ユダヤ主義的」覚書)
第3章 技術と国家(技術と総動員;近代国家に対する批判 ほか)
第4章 「戦後」の思索(ハイデガーの非ナチ化;悪についての省察 ほか)
著者等紹介
轟孝夫[トドロキタカオ]
1968年生まれ。東京大学経済学部、教養学部卒業、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、防衛大学校人文社会科学群人間文化学科教授。博士(文学)。専門はハイデガー哲学、現象学、近代日本哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
38
ハイデガーはヘレニズム(ギリシャ)に理想を求めました。ところが、いつの間にかヨーロッパを席巻している西洋形而上学の本質は作為性、地盤喪失性を持ったヘブライニズム(ユダヤ的)なものであるといいます。彼はナチスにユダヤ的な近代のニヒリズムに対する抵抗運動を、理想の思想と政治を体現した「超政治」をみます。やがてナチスの運動も批判の対象としているユダヤ的な人種主義だということに気付きます。彼が戦後にはっきりとナチスの加担を「反省」しなかったのは、ナチスが無くなっても近代の西洋形而上学の問題は戦前と戦後で変わってい2022/04/19
シッダ@涅槃
35
面白かった。特に印象に残っているのはニーチェから引き継いだ「力」の概念の考察である。それは非人称的ですべてを支配し「総動員」する。「力」の主人は人間ではない。人間も「力」に対して適合するように強要される(総動員の一部になる)。「力」は無闇矢鱈にその伸張、拡大を望むのみ……。ハイデガーというと反知性主義的で主意主義的な思想家だと勝手に思ってたので意外だった。フーコーが「2トンのノートを取った」というのも頷ける。他に労働論、身体(民族)論なども興味深かった。「放下」に関しては、まだいまいちわからない。。2020/12/13
Ex libris 毒餃子
15
ハイデガーのフライブルク大学学長就任を彼の「超政治」理論の実践と捉えて、ハイデガー思想を読み解く本。もともとがギリシア哲学者であったハイデガーの思想を強固にする本といったイメージ。己の思想の実践を諦めるのが早過ぎなのでは、という感想です。2022/09/10
いとう・しんご singoito2
8
デリダの「哲学のナショナリズム」の訳者解説で微妙な口調の言及があり読んでみました。ハイデガーのナチス「加担」は彼の哲学の真摯な追求の結果であり、必然であった、だから後世の批判は的外れであり、自己批判は不要、説明責任も生じない、と言う話。しかし「悪気はなかった」というだけですべてが免責されるなら、プーチンだってそう言うだろう。哲学者は諸学の研究者の中でも、とりわけ自らの思想とその結果責任に敏感であるべきではないのか。どこで道を誤ったのか、厳しい悔い改めが求められるのではないか。2022/03/14
iwasabi47
5
感想のちほど。 未訳である全集16巻『演説と生涯のその他の証』・「黒ノート」・69巻『存在の歴史』などを手がかりにハイデガーの「転回」は無く一貫して思索していると論証していく。目次 序論 存在の問いの政治性/ハイデガー・ナチズム論の不毛/ナチス加担の隠蔽?/近代批判の批判/存在の問いの基本構造-存在と存在者の区別/存在の意味のとしての時間/存在生起の場としての現存在/本書の構成/凡例 2020/06/25