内容説明
「役に立つ学問」という幻想、「純粋な学問」という神話。大学改革における論点を整理し、改革を推進する側と批判する側の根拠や正当性を再考する。「大学とは何か・今後どうあるべきか」を考えるために知っておくべき手がかりがここに。
目次
第1章 日本の大学の何が問題なのか―大学改革の論点と批判
第2章 なぜ巨額の税金を使って「学問の自由」が許されるのか
第3章 大学の大衆化と「アカデミック・キャピタリズム」
第4章 選抜システムとしての大学
第5章 競争すればよくなるのか
おわりに―大学になにができ、なにができないか
著者等紹介
山口裕之[ヤマグチヒロユキ]
1970年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、徳島大学准教授。専門はフランス近代哲学、科学哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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ハイランド
83
政府が進める大学改革。独立行政法人化は、大学自治という意味では良さそうに見えるが、研究教育費は削減され続け、大学は政府の意向に従うのが当然という首相の発言が。研究者は短期間で結果を出さねばならないサバイバルレースに追い込まれる。学生置いてきぼりの改革は確実に進行している。一方私大は、個性的であることを期待されつつ、補助金や改革総合支援事業で、文科省の望む型に嵌められることを半ば強制させられる。基礎研究はおろそかになり、近い将来日本からノーベル賞を取る学者はいなくなると言われている。うーん、厳しいなあ。 2019/03/20
けぴ
46
豊富なデータを基に大学改革の問題点を指摘した著者渾身の一冊。2020年度から大学入試制度が改革される。大学入学共通テストの結果は1点刻みでなくA,B,Cなど大雑把な区分に変更。さらに小論文、集団討論、高校での活動記録など多面的に評価するという。恣意的な解釈が入りこむ余地が多くなる。対応する高校の先生も合否判定する大学の先生も大変です。大学に入ったあとの教育の中身は企業からは期待されていない。企業が求めているのは”選抜機能”のみ。「厳しい試験をくぐり抜けてきた学生には能力があるだろう」と見込む。2019/05/31
おさむ
37
役に立つ学問か?純粋な学問か?こんな永遠の命題の狭間で揺れてきた大学改革について哲学者が分析する。独立行政法人化により教員は雑務に追い回されるようになり、論文の数は減少。米国の「アカデミックキャピタリズム」を真似て、ベンチャー起業や特許で稼げと政府は尻をたたくが、低迷。全入時代を迎えて混迷が続く入試方法。著者は、適度な競争の必要性は認めつつ、正しく考える技術を教員、学生共に学ぶべきだと説く。どんな職業に就いても、あるいは就かなくても生活が保障される社会の実現も必要だといい、なかなか説得力がありました。2018/09/28
やまやま
18
改めて大学の機能が社会的スクリーニングという点を知らされ、竹内洋さんは慧眼だったなと自分の過去を悔いる日々です。大学という世界はどう一般社会とつながっているかは、離れてしまうとよくわからないもので、多くの主題に分割された専門家の生きる場所としての効用の程は判じ難いです。しかし、著者は思考と議論こそが大学の生命力を生むと考え、その環境は競争で勝ち取る(与えられる)ものでなく、競わず利他的条件で提供された方が良いとの主張に感じました。大学をレッドオーシャンにする必要はないということですね。2022/11/12
りょうみや
10
大学教育の役割、日本と欧米の大学の歴史的経緯とその違い、教育における競争、大学と社会システムとの関連、入試改革など多くのテーマを扱っているがどれも面白かった。著者の多方面からの分析と提言は納得感がある。大学で身につけるべき賢さとは、様々な問題について背景を知り、前提を疑い、合理的な解決を考察し、反対する立場とすり合わせや共有できる能力と述べているが、まさにその通りで、大学では何を学ぶよりもどのように学ぶかが重要だと改めて思わせる。2017/10/18
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