目次
第1章 先史時代の黒海
第2章 ギリシア・ローマと黒海―客あしらいのよい海 紀元前七〇〇年‐紀元五〇〇年
第3章 ビザンツ帝国と黒海―偉大なる海 五〇〇‐一五〇〇年
第4章 オスマン帝国と黒海―カラ・デニズ 一五〇〇‐一七〇〇年
第5章 ロシア帝国と黒海―チョールノエ・モーレ 一七〇〇‐一八六〇年
第6章 国際社会と黒海―ブラック・シー 一八六〇‐一九九〇年
第7章 黒海の荒波を前にして
著者等紹介
キング,チャールズ[キング,チャールズ] [King,Charles]
ジョージタウン大学外交政策学部・統治学助教授(イオン・ラツィウ記念ルーマニア学講座担当、出版当時)。政治学博士(オックスフォード大学)。その後、エドモンド・A・ウォルシュ外交大学院主任を経て国際関係論・統治学教授
前田弘毅[マエダヒロタケ]
首都大学東京都市教養学部准教授。西アジア(イラン・グルジア)史専攻、ユーラシア研究。博士(文学、東京大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
90
「こんな時だから読んでみた」第二弾である。「地質学的な出来事」としては、余りにも近く、劇的に誕生した「黒海」と言う「劇場」の歴史を、その華麗な役者たちの去就を歴史学的視点から繙いた大著である。翻訳者が6名も居ることから、浩瀚かつ難度の高い作業であったことが理解できる。自国語で読めるとは、恩沢これに勝る物は無しと、言うべきことは他にない。「ロシアの海」と思いがちな黒海であるが、黒海の舞台にロシアが躍り出たのは、その歴史からすれば「真打登場」と言うべきタイミングであったことに気付いた。激しすぎるだろう真打は。2022/06/24
Toska
12
ヨーロッパ中心の視点だと、どうしても東の「どん詰まり」に見えてしまう黒海。しかしそこは多くの人々が交流し、争い、大河や街道を経て外部につながる開かれた世界だった。境界(boundary)ではなく境域(frontier)を重視することで、錯綜した、だが魅力的な地域の歴史が描き出される。例えばギリシア人の植民都市としてスタートし、ビザンツ帝国の残照を伝え、近代にあっては大英帝国の対イラン政策を支えたトラペズス/トレビゾンド/トラブザンの町ひとつ取ってもまことに興味深い。良書。2024/01/03
MUNEKAZ
7
お隣の地中海と比べると、どうにもくすんだ感のある黒海。アジアとヨーロッパの結節点として、多くの民族・宗教が帝国(ローマ、オスマン、ロシア)のもとで緩やかに繋がっていたこの地域が、民族主義の勃興と2つの世界大戦の果てに幾つかの国民国家に別れてしまうまでを描いている。時代を問わず内陸国から見た「フロンティア」「周縁部」として存在していたこの地域の特色を、多様な視点から紹介しており面白い。あとジョン・ポール・ジョーンズがロシアの御雇外国人として、黒海でオスマン海軍と戦っていたのには驚き。2017/11/05
デューク
6
「黒海は具体的なイメージが浮かばず、その沿岸地域の人々以外にはほとんど知られていない」。そう語る筆者による、ユーラシア地政学の要である黒海の歴史。 古代ギリシア、ローマ帝国、ビザンツ帝国、オスマン帝国、ロシア帝国、ソ連、トルコ、などなど。黒海を巡る国々は、世界史の中でも重要な国ばかり。地味ではあるが、黒海の歴史は世界史を語る上でも欠かせない。切り口となるテーマ選定の妙がさえる一冊。2017/10/05
人生ゴルディアス
6
知っていたつもりの黒海の歴史。全然知らないことだらけだった。というかまず脳内の地図と、本書で用いられている地図の形が違うのでそこから認識しなおすことに。オデッサ、ドニエプル川、カッファ、ドン川、コーカサス地方、クリミア。単語だけ別の本で何度も見ていたけど実態が全く分かっていなかったことにようやく肉付けできた。ついこの間ロシアがクリミアを手に入れたけど、なんというか歴史的にはむべなるかな、という感じなのね。黒海とカスピ海の位置を正確に言えるだけで、教養レベルが4くらいは上がったに違いない。2017/10/04