出版社内容情報
異文化間教育学会がこれまで蓄積してきた研究成果を、「社会的視点」「心理的視点」「言語的視点」の3領域でレビュー。社会・心理・言語という研究領域の視点と交差させながら問い改め、異文化間教育学の大系化を図るとともに、新たな知の創出を試みる。
序章 異文化間教育のとらえ直し
1.全体の概要
2.各領域の概要
2.1 社会的視点でとらえた異文化間教育(馬渕仁)
2.2 心理的視点でとらえた異文化間教育(塘利枝子)
2.3 言語的視点でとらえた異文化間教育(山本雅代)
3.各章の構成
第1章 アイデンティティ再考――振り返りと今後の課題
1.はじめに
2.これまでの主な研究
2.1 紀要に掲載された論文における研究
2.2 書評などで言及された他の研究
3.これまでの研究の傾向とその検討
3.1 自己アイデンティティと社会・文化的アイデンティティ
3.2 国(文化)を単位としたアイデンティティ
3.3 発達とアイデンティティ
4.本学会で重点が置かれなかった点
4.1 ナショナリズムとアイデンティティ
4.2 隣接領域におけるアイデンティティ研究の検討
4.3 社会学的視点からのアイデンティティ研究
5.課題――今後に向けて
5.1 発達か変化か
5.2 「ルーツ」なのか「錨」なのか
5.3 アイデンティティの複数性
第2章 偏見・差別の構造
1.はじめに
2.異文化間教育学会において差別・偏見に言及した研究
2.1 海外・帰国児童生徒教育からみた差別・偏見
2.2 在日朝鮮人(オールドカマー)教育からみた差別・偏見
2.3 ニューカマーの教育問題からみた差別・偏見
2.4 「日本人性」「共生」
2.5 社会心理学の観点からみた差別・偏見
3.差別・偏見とは?
3.1 差別に関する理論
3.2 偏見とは?
4.差別・偏見に関係した異文化間教育研究の特徴
4.1 研究方法上の特徴による差別・偏見に対する基本的視点の違い
4.2 本質主義的な視点から構築主義的な視点に基づく研究の増加
4.3 学校文化の問い直し
4.4 理念先行の傾向
5.だれもが当事者として生きる「共生」社会をどう築くのか――「日立就職差別事件」とその後から
5.1 「日立就職差別裁判闘争」
5.2 当事者とは?
6.おわりに――異文化間教育学会における差別・偏見に関する研究の課題と可能性
第3章 多文化共生教育の社会的課題
1.はじめに
2.異文化間教育学における多文化教育と多文化共生の位置づけ
2.1 多文化教育をめぐる言説
2.2 多文化共生をめぐる言説
2.3 残された課題
3.政策的枠組みの形成に向けて――韓国の事例を中心に
3.1 多文化教育政策の変遷
3.2 マジョリティをも対象とした多文化教育の展開
3.3 政策形成のダイナミズム
4.「多文化共生教育」の再構築と異文化間教育学
第4章 異文化体験をした子どもの教育・学習
1.はじめに
2.異文化体験をした児童・生徒の教育・学習に関わる研究
2.1 日本にはみられない学習スタイルへの注目
2.2 帰国生の学習スタイルの特徴
2.3 子どもを取り巻く状況と学習意欲
2.4 学力と学習言語力、認知発達の問題
2.5 学ぶ意欲と将来展望・アイデンティティ形成
3.異文化体験のある子どもの教育・学習の研究課題――発達の視点を組み込んで
3.1 乳幼児期――「学習」をとらえる新たな視点
3.2 児童期――認知発達を支える学習とは
3.3 青年期――学習の質的向上と自己のとらえ直し
3.4 成人期以降の課題――生涯発達を見据えた教育に向けて
4.おわりに
第5章 異文化間の人間関係
1.はじめに
2.異文化間の人間関係の変容
2.1 乳幼児期から始まる差異化と前偏見の形成
2.2 文化間移動をした児童・生徒の視点からとらえた人間関係
2.3 就学生・留学生の人間関係
2.4 結婚・子育てをめぐる人間関係の変容
3.異文化間トレランス
4.おわりに
第6章 異文化間における心の支援
1.はじめに
2.異文化間教育学会における異文化間カウンセリング研究
2.1 初期から特集に取り上げられるまで
2.2 特集号における課題
2.3 心理学・医学領域の学会紀要における異文化間カウンセリング研究の変遷
2.4 一般の学術雑誌における異文化間カウンセリング研究の変遷
3.異文化間カウンセリングの対象者の年齢と場の広がり
3.1 乳幼児期から児童期・青年期前期
3.2 青年期後期
3.3 成人期前・中期
3.4 成人期後期から高齢期
4.異文化間カウンセリングの支援方法の展開
4.1 従来のカウンセリングとの違い
4.2 異文化間カウンセラーの役割
5.おわりに――異文化間教育学会における「心の支援」研究の今後の課題
第7章 異文化間コミュニケーション
1.はじめに
2.学会での「異文化間コミュニケーション」の位置づけ
2.1 学会会員の主な研究・実践分野
2.2 異文化「間」コミュニケーション
2.3 出版物と発表の場
3.「 異文化間コミュニケーション」と「コミュニケーション」「文化」の関係
3.1 「異文化間コミュニケーション」と「コミュニケーション」
3.2 パラダイムと「文化」
4.「異文化間コミュニケーション」に着目した論考事例
4.1 「非言語コミュニケーション」の取り扱い
4.2 サブカルチャーとしてのろう文化
4.3 自文化中心主義的な教師の言動
4.4 新しい日本語行動パターン創出の可能性
4.5 相互作用時の会話の調整
4.6 構築主義的文化概念へのアプローチ
5.「異文化間コミュニケーション」と教育――教授方法
6.異文化間教育学への提言
第8章 主流派言語母語話者の第2言語習得・学習
1.はじめに
2.海外在住および帰国児童・生徒の言語能力
2.1 『異文化間教育』に掲載された論文5件
2.2 関連の文献に記載された研究
2.3 言語喪失研究分野よりの知見
3.朝鮮学校における朝鮮語イマージョン教育
4.小学校英語教育と国際理解教育
5.大学教育における複数言語化現象
6.おわりに
第9章 少数派言語母語話者の第2言語習得・学習
1.はじめに
2.少数言語母語話者の言語習得・学習をとらえる視座
3.異文化間コミュニケーションとしての日本語教育
4.地域日本語学習支援
4.1 多文化共生パラダイム具現化の葛藤
4.2 学びの場としての地域社会の可能性――地域ネットワーキング研究
5.少数派言語母語話者の子どもたちの言語習得・学習
5.1 言語能力の育成と教育保障
5.2 母語と第2言語の両側面からの学習言語能力の育成
5.3 言語的相互行為における子どもの言葉の学び
5.4 家庭における言語習得
6.ライフ・コースを視野に入れた言語習得の研究
7.おわりに
第10章 デフォルトとしてのバイリンガリズム
1.はじめに
2.デフォルトとしてのバイリンガリズム
3.本学会における「言語に関わる諸課題」の位置づけ
3.1 閲読の対象とした論文等
3.2 論文等に通底するある観点
3.3 当該観点の生成背景
4.本学会における潜在的観点に包摂される問題点――バイリンガリズムという見地から
5.学会における新たな潮流の胎動と研究のさらなる発展の必要性
6.おわりに
終章 課題と展望
1.社会的視点からとらえた考察(馬渕仁)
1.1 今回の検討で見えてきたもの
1.2 課題と展望
1.3 まとめ
2.心理的視点からとらえた考察(塘利枝子)
2.1 今回の検討で見えてきたもの
2.2 課題と展望
2.3 まとめ
3.言語的視点からとらえた考察(山本雅代)
3.1 今回の検討で見えてきたもの
3.2 課題と展望
3.3 まとめ
参考文献
索引
あとがき
執筆者紹介
異文化間教育学会[イブンカカンキョウイクガッカイ]
山本 雅代[ヤマモト マサヨ]
関西学院大学国際学部教授/言語コミュニケーション文化研究科教授
『バイリンガリズム入門』(編著、大修館書店、2004年)、“Language Use in Interlingual Families: A Japanese-English Sociolinguistic Study”(Multilingual Matters, 2001)。
馬渕 仁[マブチ ヒトシ]
大阪女学院大学副学長
『クリティーク 多文化、異文化――文化の捉え方を超克する』(単著、東信堂、2010年)、『「多文化共生」は可能か――教育における挑戦』(編著、勁草書房、2011年)。
塘 利枝子[トモ リエコ]
同志社女子大学現代社会学部教授
『子どもの異文化受容――異文化共生を育むための態度形成』(単著、ナカニシヤ出版、1999年)、『アジアの教科書に見る子ども』(編著、ナカニシヤ出版、2005年)。
目次
序章 異文化間教育のとらえ直し
第1章 アイデンティティ再考
第2章 偏見・差別の構造
第3章 多文化共生教育の社会的課題
第4章 異文化体験をした子どもの教育・学習
第5章 異文化間の人間関係
第6章 異文化間における心の支援
第7章 異文化間コミュニケーション
第8章 主流派言語母語話者の第2言語習得・学習
第9章 少数派言語母語話者の第2言語習得・学習
第10章 デフォルトとしてのバイリンガリズム
終章 課題と展望
著者等紹介
山本雅代[ヤマモトマサヨ]
関西学院大学国際学部教授/言語コミュニケーション文化研究科教授
馬渕仁[マブチヒトシ]
大阪女学院大学副学長
塘利枝子[トモリエコ]
同志社女子大学現代社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。