内容説明
この不安と閉塞感はどこからくるのか?雇用の劣化、社会保障の崩壊。歴史的大転換のなか荒れ狂う資本主義にさらされる持たざる者には社会的所有の再構築しかない。カステル社会学のエッセンス。
目次
第1部 労働の規制緩和(隷属と自由のあいだの労働―法の位置;労働にはいかなる中核的重要性があるのか;労働法―手直しか、つくり直しか ほか)
第2部 保障の再編成(社会国家の名において;変転する社会国家のなかの社会事業;守られるとはどういうことか―社会保障の社会人間学的次元 ほか)
第3部 社会喪失への道のり(社会喪失の物語―トリスタンとイズーについて;歴史のなかの周縁人;排除、罠の概念 ほか)
著者等紹介
カステル,ロベール[カステル,ロベール] [Castel,Robert]
1933年フランス・ブレスト生まれ。社会学者。パリ社会科学高等研究院(EHESS)教授などを務めた。2013年死去
北垣徹[キタガキトオル]
1967年生まれ。西南学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nabebe
1
ゼミの本。今日で社会学のゼミが終わった。この本は何だろうか。いたずらに不安だけ煽られて終わったような気がする。1970年ごろまでは労働に対して国が労働法や社会保障によりしっかり労働者を保障できていたし、労働組合といった集団により労使交渉も出来ていた。しかしながら1970年後半以降、国はもはや保障する余裕がなくなり、さらに多様な仕事の形態、競争の激化により脱集団化が進む。それにより、個人化が進む。それはつまり、勝ち組と負け組に大きな差を生み出し、社会に鬱憤をためていく。生活保護と資本家さらには正規雇用に 2018/01/15
singoito2
0
掘り出し物。雇用の非正規化の現状と社会保障の危機と選択肢を検討した上で、そのような社会喪失の本質と歴史的な位置づけを、フランスの人類学の系譜に立ちつつ論じて、非常に刺激的。ただし、フランス語に特有の「これをたんに、さまざまな心理的側面を備えた個人がいる(それは明白だ)という意味で理解しないならば、この事実確認は、みかけほど凡庸ではなくなる」というような複雑な多重否定も随所にあり、胃もたれ感を伴いがち。それでも果敢に挑戦し、喫すべき逸品です。2020/08/07