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内容説明
明治期に、はじめて宗教的伝統に基づく他力の発想と西洋から学んだ論理とを結びつけて語ることを試みた清沢満之。これまで清沢が残した思想を高く評価する人物は何度か現れたものの、いまだ忘れられた宗教人・哲学者である。夏目漱石や正岡子規らとの関係、そして西田幾多郎ら京都学派に与えた影響を辿り、彼の思想が日本思想史に残した大きな影響とその可能性に光を当てる。
目次
清沢満之―「神話」の形成とその解体(忘れられた宗教人;宗門内のウルトラ有名人 ほか)
第1章 人物と思想(徳永満之時代;哲学者の相貌 ほか)
第2章 東京大学哲学科(近代の諸課題;清沢の試み ほか)
第3章 清沢満之のインパクト(京都帝大文科大学;二人の先達 ほか)
第4章 『歎異抄』の再発見(煩悶の時代;清沢満之と『歎異抄』 ほか)
著者等紹介
山本伸裕[ヤマモトノブヒロ]
1969年生まれ。東京大学文学部思想文化学科倫理学専修課程卒業。東洋大学文学研究科仏教学専攻博士後期課程単位取得退学。文学博士(大谷大学)。真宗大谷派親鸞仏教センター研究員、東京大学東洋文化研究所特任研究員を経て、現在東京医療保健大学非常勤講師。専門は日本倫理思想史、倫理学、インド大乗仏教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紙狸
12
2014年刊行。清沢満之(1863-1903)は、東本願寺の学僧であった哲学者。著者・山本伸裕氏は、岩波版全集(2002-2003)の編集にあたった研究者であり、テクスト・クリティークの成果を踏まえて、清沢の原像と彼が明治時代に及ぼした影響に迫る。清沢の努力は、歎異抄を宗教哲学の普遍的構造におとしこむことに向けられた。西田幾多郎ら京都学派は、清沢が切り開いた地平を継承した。しかし、清沢の晩年にその周囲にいた暁烏敏ら一部門人は、論理性無視の恩寵主義の喧伝に清沢を利用した。2025/06/13
可不可
1
数年前に、今村仁司編『現代語訳清沢満之語録』(岩波現代文庫)を読みかかったが、歯がたたなかった。山本伸裕氏のこの本に出会えて、ようやく清沢満之の著作に入門できそうな気がする。入門するうえで必要な解説書である。■それはそれとして、第三章では、愛読している子規の『病牀六尺』との接点が語られていて目を開かされた。子規の人間関係といった背景となる知識がなくては、『病牀六尺』の上面しか読めないんだと感じた。2021/07/03
sonohey
1
浄土真宗大谷派の僧侶にして、宗教の哲学的解釈を試みた清沢満之。本書は、その生涯をなぞるとともに、真宗内、東大哲学科、京都学派、正岡子規、夏目漱石等との思想的交流について解説されている。錚々たる面々を持ち出したのは、入門書としての配慮とのことであるが、清沢個人というよりは、浄土真宗の影響力の大きさにただただ驚き。清沢自身の宗教哲学についての解説は、本の性質上物足りなかったが、宗教(感性)を哲学(論理)的に解釈するという彼の思索について、俄然興味がわいた。2015/02/21