目次
イントロダクション―現代における「人権」とは?(今なぜ人権か;人権とは何か)
第1章 人権理念の歴史(人権理念の普遍化と国際化;十七・十八世紀の政治哲学と「思想・言論の自由」;宗教改革の「自由」と自然法)
第2章 現代人権思想の理論的根拠(現代思想の諸状況;人間の尊厳と倫理的命令に対する主体性)
第3章 現代人権思想と政治理論(近代的人間「強い個人」から現代的人間「弱い人々」へ―自己吟味から連帯へ;市民社会の形成と展開―中小社会集団のネットワーク;「非政治的なるもの」と「政治的なるもの」―政治権力の価値中立性)
第4章 デモクラシー(「公共性」解釈―市民の主体的行為;統治権力の正当化原理とその責務;政治機能の限定)
著者等紹介
鷲見誠一[スミセイイチ]
1939年生。慶應義塾大学名誉教授。1968年、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。専門はヨーロッパ政治思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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左手爆弾
2
わかりやすいが、よくわからない。人権について知りたいことを学術的に説明してくれる本だと思っていたが、そういうわけでもない。内容が多岐にわたってしまい、「人権とは何か」というシンプルな問いに答えられていない。さらにアメリカ批判、小泉の靖国参拝批判、阪神大震災の時の市民ボランティア礼賛など、いかにも特定の立場の人が好みそうな実際上のエピソードが盛り込まれているが、学問としての人権概念を学びたいものにとっては脱線にしか見えない。前半の思想史的な記述は評価できるが、それぞれの思想家についての評価には疑問。2012/08/31
じゅんすいむく
0
思想史としての人権はよく見通せる。人権の基礎として超越的なもの(自然法や神などなど)はポストモダン以降成り立ちがたいという議論を受けつつも、人間は形而上学的存在であるとして、「具体的な関係性の中での超越性」を提起するのは、独特で興味深い。が、あまり掘り下げられてはいない。また、日本における問題関心は強いようであるが、仏教に軽く触れる程度で、日本における人権史はほとんど分からない。2014/04/26
倉井 香矛哉(Kamuya Kurai)
0
「人間の尊厳は、人と超越的絶対との関係性において確保される」、これが本書の著者の立場である(ここでは「人間」と「人」が使い分けられている。先験的に到来する「超越的絶対」およびそれを対象化する「人」の関係形式において把握される自己意識こそが「人間」的存在の本質にほかならない)。21世紀に解決されるべき3つの課題…環境問題、生命倫理、人権問題は、個別的でありつつ相互に関連性があり、今日のグローバルな状況においても、日本の状況においても、人権は重要なタームでありつづけている。西洋思想史を通時的に再確認する良書。