世界歴史叢書
フィンランドの歴史

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  • サイズ B6判/ページ数 458p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750328607
  • NDC分類 238.92
  • Cコード C0322

出版社内容情報

ヨーロッパ北端の貧しい農業国が、ロシアからの独立後の内戦に続き、強大な隣国との戦争で国土の10分の1あまりを失い、多くの国民が犠牲になりながらも、ソ連の影響下から抜け出し、発言力のある自信に満ちた欧州国家として生まれ変わった道筋を辿る。


 日本の読者への挨拶
 序文

第1章 中世の辺境地方として
第2章 スウェーデンの遺産
第3章 ストックホルムからサンクト・ペテルブルクへ(一七八〇~一八六〇年)
第4章 萌芽期の国家(一八六〇~一九〇七年)
第5章 独立国家(一九〇七~三七年)
第6章 戦争と平和(一九三九~五六年)
第7章 ケッコネンの時代(一九五六~八一年)
第8章 国民国家からユーロステートへ

 監訳者あとがき

 年表
 歴代大統領
 選挙と内閣
 参考文献
 索引


 序文

 フィンランドという国は、近代の出世物語の部類に数え入れられてしかるべき存在である。ヨーロッパ北端の貧しい農業地帯が、わずか一世紀たらずのうちに欧州連合のなかでもとりわけ裕福な国へと変貌を遂げた事実はまさに快挙といえるが、その道のりは決して平坦なものではなかった。一九一八年にロシアから独立すると、フィンランド国内で激しい内戦が勃発し、その戦渦は以後数十年にわたりこの国の政体に爪あとを残した。さらに一九三九~四五年にかけてフィンランドは三度の戦争を経験した。まず二度にわたってソヴィエト連邦と戦い、その後ドイツと戦ったのだが、一連の戦争で多くの国民の命が犠牲になるとともに、国土の一〇分の一あまりを失った。独立共和国となってからのフィンランドの政治史は、二〇世紀の大半が紛争に明け暮れ、国内的に安定した欧州の優等生という今日のイメージとはおよそかけ離れたものだった。けれども過去二〇年のうちにフィンランドはソヴィエト連邦の傘下から抜け出し、発言力のある自信に満ちた欧州国家として生まれ変わることに成功した。そして、この過程で同時に行われたのが、自国の歴史を再評価し、自らのアイデンティティを再確認するという作業だった。とりわけフィンランドのごく最近の過去について厳しい見直しが行われたが、おそらくこれは清算の過程と見られるものの一環であり、東部欧州諸国が近代史における「空白」の時代について行った再検討と似ていなくもない。
 本書の出発点の一つも、この国の過去を再評価することにある。本書は主に政治史であるが、この国の歴史を時には短期間のうちに、時には何世紀もかけて作り上げてきた社会や文化、経済の影響についても詳しく見ていくつもりである。
 本書では従来の年代順による構成を採用しながらも、今日のフィンランドを形作ったいくつかの特色を浮き彫りにしようと試みた。とりわけ言語や文化の発展に影響を与えた地理的、時間的、政治的要因について注目して取り上げた。寒くて不毛に近い北の土地に暮らす人びとがいかに工夫して環境に適応しようと努めたか、この地がいかにして日々の糧を得るための資産となり、独立国家の象徴となったかを見ることにより、フィンランド人の本質に迫ることができるだろう。土壌を耕し生計を立てるための苦闘こそ、巨大な氷冠が後退するとともに人びとが定住を始めた初期の時代から、何千人もの移住者を多大な努力を払って再定住させた一九四〇年代後半まで、一貫して流れる壮大かつ普遍のテーマなのだ。この意味でフィンランドはまさに辺境の国であり、このことがおそらく、フィンランド人の生活に何世紀にもわたり影響を及ぼしている二つの相反する気性が生まれた所以だろう。最初の気性は、手に入る資源を可能なかぎり利用したいという欲望に強く駆られて生じたものと思われる。この気性によって権力に服従する強い伝統が生まれ、この伝統はルター派教会や強固な官僚制度、法に対する揺るぎない敬意によっていっそう強化されたが、一方で圧政よりもむしろ協調や合意を好んだ。もう一つは、伝統としてほとんど正式に定義されてはいないが、野蛮で手に負えず、法律をものともしない一種の辺境開拓者気性だ。例としては、アレクシス・キヴィが一九世紀に書いた小説の主人公で、この小説の題名にもなっている、文明の束縛から逃れ荒野で自由気ままに暮らす道を選んだ『七人兄弟』や、大きなナイフを下げ、大いばりで闊歩する東ボスニアのpuukkojunkkarit(プーッコを持って暴れまわる若者たち)、両大戦間の禁酒法時代に国じゅうの酒好きに危険なアルコールを売った密造者、さらにアキ・カウリスマキの映画に登場する道に迷った哀れな人びと。誰もが皆、攻撃的な反抗心という野放しの伝統を継承し、herrat(郷紳)に対し根深い不信感を抱いている。華々しく語られる出世物語の陰に隠れがちだが、こうした伝統も今日のフィンランドが形成されるうえで一つの役割を果たしている。

(…後略…)

目次

第1章 中世の辺境地方として
第2章 スウェーデンの遺産
第3章 ストックホルムからサンクト・ペテルブルクへ(一七八〇~一八六〇年)
第4章 萌芽期の国家(一八六〇~一九〇七年)
第5章 独立国家(一九〇七~三七年)
第6章 戦争と平和(一九三九~五六年)
第7章 ケッコネンの時代(一九五六~八一年)
第8章 国民国家からユーロステートへ

著者等紹介

カービー,デイヴィッド[カービー,デイヴィッド][Kirby,David]
1942年生まれ。1963年にロンドン経済大学で学士号を取得し、1971年にロンドン大学で博士号を取得。環バルト海地域とフィンランドに関する数多くの著書、論文がある。ロンドン大学に付属するスラヴ研究所で30年以上教鞭をとり、定年

百瀬宏[モモセヒロシ]
1932年生まれ。津田塾大学・広島市立大学名誉教授。国際関係学、フィンランド史専攻。フィンランド共和国白薔薇勲章騎士一級章受勲

石野裕子[イシノユウコ]
1974年生まれ。津田塾大学国際関係研究所研究員および法政大学非常勤講師。国際関係学、フィンランド近現代史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のし

6
フィンランドのくらしとデザインという展覧会を見に行ったので、フィンランドの歴史に少し興味がでて読んでみました。思っていた歴史と全然違い、少し意外な感じでした。未知の世界だったので、読んでよかったです。2012/10/08

nranjen

2
図書館本。独立周辺を読んだのですが、なかなかの睡魔と戦わなければならず、寝落ちすること数回。本日2回。ピンポイントで興味中心に読めばよいのですが、見慣れぬ名詞続きでそうもいかないのが新情報がつまった本の難しいところですね。この手の歴史本は難関だ…2021/01/28

pika

0
分厚かった2014/02/01

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