出版社内容情報
参加型地域開発の手法として広まるPRAを概念、実践方法、そして応用まで解説した総合手引き書。空間、時間、関係の3つのテーマから28の手法を豊富な実例とともに紹介。実践者が創意工夫し効果的にファシリテートするためのヒントが凝縮されている。
序文(ロバート・チェンバース)
はじめに(ソメシュ・クマール)
謝辞(ソメシュ・クマール)
略号一覧
第1章 概念の明確化
1.1 はじめに
1.2 参加の意味
1.3 住民の参加―その利点
1.4 住民参加の障害
1.5 RRAとPRAの登場
1.6 PRAの起源と出典
1.7 農村開発ツーリズムとバイアス
1.8 RRAからPRAへの移行
1.9 PRAの方法
1.10 PRAの原則
1.11 転換―PRAの顕著な特徴
1.12 PRAに関する神話
1.13 態度と行動
1.14 PRAの応用
1.15 PRAの課題
第2章 空間に関するPRAの手法
2.1 社会マップ
2.2 資源マップ
2.3 参加型模型法
2.4 移動マップ
2.5 サービスと機会マップ
2.6 トランセクト
2.7 参加型人口調査法
表2-2 空間に関するPRA手法の早見表
第3章 時間に関するPRAの手法
3.1 年表づくり
3.2 傾向分析
3.3 時系列トランセクト
3.4 季節カレンダー
3.5 日課表
3.6 参加型家系図
3.7 夢マップ
表3-3 時間に関するPRA手法の早見表
第4章 関係性を扱うPRAの手法
4.1 因果関係図
4.2 影響力分析図
4.3 システム図
4.4 ネットワーク図
4.5 プロセス・マップ
4.6 生活福祉ランキング法
4.7 ベン図(社会関係図)
4.8 二項ランキング法
4.9 投票ランキング法
4.10 力の場分析
4.11 パイ図
4.12 生計分析
4.13 クモの巣図
4.14 ボディ・マップ
表4-9 関係性を扱うPRA手法の早見表
監訳者あとがき(田中治彦)
参考文献
はじめに
PRAは10年以上にわたって私の情熱の中心にあった。私はPRAの経験に魅力を感じていたし、それが「開発におけるすべての病気の万能薬」ではないにしろ、さまざまな問題にアプローチするための新しい道を間違いなく切り開くことを知った。PRAの原則と手法は政府にもNGOにも等しく有効であることを発見した。それは人々の参加を実効的な方法で実現することに関心を持つ人々に提供された。実践家やファシリテーターとしての経験を通して、私はその領域を広げて人生を変える力とするように努めた。
私はこのテーマについての多くの本を読んだ。その多くはもちろんマニュアルであり、その中には私自身のものもある。社会政治的そして経済的な文脈が異なる国々で行われた、さまざまな背景とニーズを持った参加者のための広大なテーマのPRAワークショップに参加し、また主催してきた。しかしながら未だに概念と実践と応用とを総合的に兼ね備えた一冊の本を発見することはできなかった。私は学習者や実践家たちからPRAの限界を拡げるようなリソースとなる一冊の本を出版するように激励された。
そこである程度は構造化されてはいるがオープン・エンドであるような思考のプロセスをまとめることを始めた。その成果が本書である。
私は理念と実践を提供できて、しかも創造性や実験や成長を促すような本を書こうと努力を傾けた。本書は経験からの実例や実用のための素材や使用のための指示を提供してはいるが、他のマニュアルとは違って本書は創作の余地を残し、実際に読者による創作を奨励している。本書は現場での実践からの洞察に富んでいる、と同時に読者や実践家がファシリテートする際に有効と思われる優れた実践の秘訣を授けている。
本書は持続可能な開発を推進しようという関心を持つ人々にも、また現場において細部の手法を求める人々にも、読まれ活用されるであろう。研究者やコンサルタントや講師の人々も皆、本書を価値ある支援と考えるであろう。最初から最後まで読むのもよし、手法をすべてなぞるのもよし、参考図書として使うのもよし、本書は読者のニーズに応じた資料集である。
本書は5つの章に分かれている。第1章は参加の概念を扱い、その多様な局面について解説する。本章ではPRAの概念とその起源、原則そして応用について追求する。第2、3、4章はそれぞれ空間、時間、関係に関するPRAの手法を扱っている。手法は多くの実例によって図示されて、使いやすいステップに分けられる。それぞれの手法の説明においては、導入、応用への示唆、実例、手順の説明によるプロセスの概観、必要とされる時間と用具、利点と限界、が示される。最後の章はPRAのまとめであり要約として助けになるだろう[訳注:本書では第5章は割愛してある]。用意された手法の一覧表は読者や実践者にとって非常に魅力的なものとなるであろう。
こう申し上げた後で、本書は実践での学習の代替物とはけっしてならないということを警告しておこう。本書が読者にとって有効になるのは、現場に出て経験とともに理解したときのみである。PRAの用語や手法は覚えるのにはたやすいが、正当な態度や行動のないところではそれらは有効ではない。データは集まるかもしれないが、人々のエンパワーメントは失われる。それはPRAの概念と方法論の最大の誤用である。
本書が読者のニーズや期待に応えることができるならば、私がこの本に費やした努力が実ることになる。しかしながらリトマス試験紙となるのは、貧しく周辺に追いやられた人々にその生活の変化をもたらすため、読者が彼らにより接近することに究極的に役立ったかどうかである。
読者が本書をくり返し使用して、洗練させて、読者の夢を付け加えて、そして読者の学びをいつか私に返していただければ望外の喜びである。
ソメシュ・クマール ハイデラバードにて
目次
第1章 概念の明確化(参加の意味;住民の参加―ほか)
第2章 空間に関するPRAの手法(社会マップ;資源マップ ほか)
第3章 時間に関するPRAの手法(年表づくり;傾向分析 ほか)
第4章 関係性を扱うPRAの手法(因果関係図;影響力分析図 ほか)
著者等紹介
クマール,ソメシュ[クマール,ソメシュ][Khmar,Somesh]
1989年にインドのアンドラ・プラディシュ州政府に勤務し、徴税官や治安判事を務める。1996年から2000年までNGOのひとつであるインド・アクションエイドのPRA部部長。参加型開発の実践で著名なプラクシス(パトナ参加型活動研究所)を設立し、初代の代表に就任。この間インドのNGOの指導者養成のみならず、政府の開発担当者の研修を数多く行う。世界銀行「貧しい人々との対話」研究に参画し、その成果は『世界開発報告2000‐01年版』に所収される
田中治彦[タナカハルヒコ]
1953年、東京生まれ。1980年より(財)日本国際交流センターで民間協力の仕事にたずさわる。岡山大学教育学部を経て、立教大学文学部教授。サンダーランド大学(英国)とチェンマイ大学(タイ)で客員教授を務めた。(特活)開発教育協会(DEAR)代表理事(2002~08年)。立教大学ESD研究センター運営委員。専門は社会教育と開発教育(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。