出版社内容情報
ニュージーランドの自然・歴史・文化・政治・経済・社会などを10のブロックに分け、63のトピックスと14のコラムによって多角的にとらえ、多数の写真・図版も駆使して現代ニュージーランドを描き出す。執筆陣にニュージーランド学会員多数参画。
はじめに
1 美しい自然と珍しい動植物
第1章 ハエレマイ・アオテアロア――ようこそニュージーランドへ
第2章 ニュージーランド鳥瞰図――地理・歴史・社会の概略
第3章 南太平洋の島弧――火山と地震の国
【コラム1】タラウェラ山の噴火
第4章 氷河とフィヨルド――貴重な観光資源
第5章 シダ植物の宝庫――国章のデザインにも
第6章 森の王者カウリ――圧倒的な存在感
第7章 絶滅した巨大な鳥モア――飛べない鳥の哀歌
第8章 夜行性の飛べない鳥キーウィ――ニュージーランド人の代名詞
2 マオリの到来
第9章 ニュージーランド最初の住人――故郷は熱帯の島々
第10章 カヌー伝承――波濤を超えて
第11章 マオリの社会生活――マナとタプに囲まれて
【コラム2】マオリの入れ墨
第12章 生活の中心マラエ――念入りな彫刻が特色
3 ヨーロッパ人との邂逅
第13章 ヨーロッパ人の到来――探検家タスマンとクック
第14章 マオリ国の誕生――イギリス王の下で
第15章 ウェークフィールドとニュージーランド会社――理想的な植民地の設立をめざして
【コラム3】ニュージーランド会社の移民船
第16章 ワイタンギ条約の締結――イギリスの植民地に
第17章 土地をめぐる戦い――男は土地と女のために死ぬ
第18章 キンギタンガとマオリ新宗教――マオリにも王を!
第19章 土地を奪われたマオリ――果てしなき苦悩のはじまり
4 新たな国づくり
第20章 6つの入植地とオークランド――未知の土地での生活
第21章 ゴールドラッシュの到来――南島の繁栄
第22章 自治植民地の出発――分権から中央集権へ
第23章 自由党内閣の土地改革と労働党内閣の社会保障政策――小農の振興と暮らしの安定
第24章 祖国はイギリス――ボーア戦争から第2次世界大戦まで
5 産業の発達
第25章 牧羊の始まりと展開――ニュージーランドを特色づけた家畜
【コラム4】羊の毛刈りコンテスト
第26章 酪農王国――合理的な乳牛飼養
第27章 キーウィフルーツが主力果実――リンゴ、ブドウの生産も盛ん
第28章 重要産業となった林業――ラディアタ・パインが主力
第29章 水産業と海の自然保護――豊かな海に囲まれて
第30章 核に頼らないエネルギー資源――主力は水力発電
6 先進的政策
第31章 女性選挙権の獲得――女性の意見を国政に
第32章 公的年金制度――誰にも公平な老後を
第33章 所得保障――まず国民の生活を保障する
第34章 障害者福祉――障害は私にあるのではなく、社会にある
第35章 病気とケガ――独特な保健・医療制度
第36章 環境運動――マナポウリ湖を救え、天然林を護ろう
【コラム5】美しい海を守る
第37章 環境政策――徹底した地方分権の1991年資源管理法
7 変革の時代
第38章 都市化の進行――エメラルド・シティを目指して
【コラム6】四都物語
第39章 イギリスのEC加盟と石油危機――不況の始まり
第40章 非核政策――アメリカ・フランスとの対立
第41章 民営化と規制緩和――ロジャーノミックスとは何か
8 教育・文芸・スポーツ
第42章 就学前の子どもたち――4つの原理と5つの要素の絡み合い
【コラム7】コハガレオ
第43章 複雑な学校制度――複数路線の選択が可能
【コラム8】子どもの絵本 多文化をテーマに
第44章 マンスフィールドとその後継者たち――ニュージーランドの文学的風土
第45章 活躍するマオリ作家たち――イヒマエラ、グレイス、ダフ、ヒューム
【コラム9】『ポーカレカレアナ』の波紋
第46章 絵画と彫刻――西洋とポリネシア芸術の混交
第47章 ニュージーランド映画――政府による支援と観光資源となるロケ地
【コラム10】ニュージーランドの音楽
第48章 盛んなスポーツ――広い裾野を持つラグビー
第49章 エコツーリズム――スモール、スロー、サイレント
9 日本との関係
第50章 日本とニュージーランドの民間交流――19世紀末から20世紀初めにかけて
第51章 ラタナと中田重冶――ふたりの宗教指導者
【コラム11】ニュージーランドにおける日本の影響:庭園と植物
第52章 フェザーストン事件――和解の歌声
第53章 日本語教育――高校での学習者はフランス語に次いで2位
第54章 日本人留学生――ホームステイが特色
第55章 貿易と投資――日本は主要な市場
【コラム12】姉妹都市
10 今日のニュージーランド
第56章 ロジャーノミックスその後――聖域なき行政改革
【コラム13】郵政民営化の光と影
第57章 公平な代表を――小選挙区比例代表併用制
第58章 ワイタンギ審判所の活動と個別的和解――積年のマオリ辛苦の解決に向けて
第59章 マオリ復権運動とルネッサンス――言語と芸術・工芸を中心に
第60章 今日のマオリ――楽園の住人か低所得者か
【コラム14】現代に復興する「マオリ新年祭」と「マタリキ」
第61章 オセアニア諸国の一員として――太平洋島嶼フォーラムにおける役割
第62章 移民政策――多民族国家への道とそれからの脱却
第63章 グローバル化の中で――理想郷から格差社会(?)へ
ニュージーランドを知るための書籍・映画ガイド
はじめに
(…前略…)
イギリス流刑地となることのなかったニュージーランドに、行きずりの捕鯨者や商人に加えてヨーロッパ人定住者のコミュニティが建設され、ヨーロッパの植民地となったのは19世紀に入ってからで、世界史的に見てきわめて遅い。このことはニュージーランドへのポリネシア人による移動が、ハワイやラパヌイ(イースター島)よりも遅れて、ポリネシア植民の最後となる12~13世紀に行なわれたことと重ね合わせると興味深い。海を自在に航海したポリネシア人にとっても、まさにニュージーランドは「距離の暴虐」の彼方にある「辺境」であったのである。
このように遅れて植民地化されたことは、ある意味で先住民マオリにとって、またヨーロッパ人入植者双方にとって幸いであったかもしれない。彼らはその建国の理念として、あるいは両者の護るべき原理原則として「ワイタンギ条約」を有しているからである。植民者と被植民者が曲がりなりにも条約を締結することができたのは、19世紀も半ばに近い1840年という年代であったからであろう。もちろん幸いというのは、あくまでも他植民地と比較しての問題である。
辺境には辺境の価値がある。辺境であるがゆえに、毅然とした非核政策を取ることも可能であるのかもしれない。喧騒を離れた美しい自然が、人々の穏やかな暮らしを可能にしているのかもしれない。理由はいろいろであろうが、ニュージーランドを訪れたほとんどの日本人が、ニュージーランド・ファンになって帰ってくる。この書物の執筆者もすべて、ニュージーランド大好き人間である。『ニュージーランドを知るための63章』がニュージーランド大好き人間をさらに増やすことができれば、それは執筆者一同にとっての望外の喜びである。
そもそもこの本の出発点は、2007年にニュージーランド学会がその設立10周年を期して出版した『ニュージーランド百科事典』(春風社)にある。百科事典の出版に関わった何人かの寄稿者から、せっかく勉強したたくさんの事柄を、事典とは違った形でまとめてみたいという希望が持ち上がり、今回この『ニュージーランドを知るための63章』に結実させることができた。『ニュージーランド百科事典』では、事典の性質上どうしても記載は詳細ではあるが細切れになる。『ニュージーランドを知るための63章』では、ニュージーランドの自然、歴史、政治・社会、芸術、さらに日本との関係も含めて、その全体像をできるだけ包括的に、またそれぞれの関連も踏まえながら、読み物風に面白く読者に伝えるよう工夫した。
(…後略…)
目次
1 美しい自然と珍しい動植物
2 マオリの到来
3 ヨーロッパ人との邂逅
4 新たな国づくり
5 産業の発達
6 先進的政策
7 変革の時代
8 教育・文芸・スポーツ
9 日本との関係
10 今日のニュージーランド
著者等紹介
青柳まちこ[アオヤギマチコ]
本名・真智子。横浜市生まれ。東京女子大学文学部卒業。東京都立大学大学院博士課程修了。ハワイ大学、オークランド大学留学。文学博士(東京都立大学)。専攻は文化人類学、オセアニア地域研究。清泉女子大学助教授、立教大学助教授・教授、茨城キリスト教大学教授を経て、立教大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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