食糧テロリズム―多国籍企業はいかにして第三世界を飢えさせているか

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食糧テロリズム―多国籍企業はいかにして第三世界を飢えさせているか

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  • サイズ B6判/ページ数 205p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750324548
  • NDC分類 611.38

目次

第1章 地球規模での食糧供給の乗っ取り
第2章 大豆帝国主義と地域食文化の破壊
第3章 盗まれた海の収穫
第4章 狂った牛と聖なる牛
第5章 種子の盗まれた収穫
第6章 遺伝子工学と食糧安全保障
第7章 食糧民主主義を取り戻す

著者紹介

シヴァ,ヴァンダナ[シヴァ,ヴァンダナ][Shiva,Vandana]
1952年、インドのウッタランチャル州生まれ。カナダのウエスタン・オンタリオ大学で物理学を専攻、量子力学研究で博士号取得。1980年代から、農業問題、環境問題、社会問題の研究と実践活動に関わる。研究と連動した社会運動の基地として1982年に「科学・技術・エコロジー研究財団」を設立、これまでに300本を超える専門的論文を発表し、20冊に及ぶ本を著者・共著者として出版。1993年、もうひとつのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド(正しい生活)賞」、国連環境計画の「グローバル500賞」、「アースデイ国際賞」を受賞

浦本昌紀[ウラモトマサノリ]
1931年生まれ。東京大学卒業。理学博士。山科鳥類研究所を経て和光大学教授。現在は名誉教授。専門は鳥類学、生態学、進化学

竹内誠也[タケウチセイヤ]
1956年生まれ。和光大学人文学部卒業。大学時代から生物研究に従事。専門は霊長類学、行動学

金井塚務[カナイズカツトム]
1951年生まれ。埼玉大学理学部卒業。日本モンキーセンター研修員を経て、1991年より環境NGO広島フィールドミュージアム代表。専門は霊長類学、哺乳類生態学。「すばらしき動物」シリーズ『ニホンザル』(いちい書房、1985)で日本科学読み物賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

出版社内容情報

多くの国に飢餓状態の人びとがいる一方で、倉庫では大量の穀物が腐っていく。現代の食糧問題の元凶は、経済のグローバリゼーションと巨大アグリビジネス企業による資本の暴力にほかならない。成長・開発神話の隠れた実態を暴き、来るべき食糧民主主義を説く。


 盗まれる収穫を守るための戦闘小史
第1章 地球規模での食糧供給の乗っ取り
 食糧と農業の企業による乗っ取り
 食糧の安全保障は種子の中にある
 「自由貿易」か「強制貿易」か
 飢えを産む単一種大面積栽培
 輸入の不確実性
 自然がもたらす収穫を掠め取る
 食糧民主主義
第2章 大豆帝国主義と地域食文化の破壊
 「マスタードは私たちの命」
 むくみ病の流行
 多国籍企業はマスタード油の惨事から利益を得る
 地球規模の大豆商人
 大豆特許と種子の独占
 工業的加工
 大豆製品は健康的か
第3章 盗まれた海の収穫
 ウミガメとエビ
 ウミガメ対トロール漁
 「青の革命」の暴力性
 私的利益に対する公的援助
 西側の高級食材と第三世界の生産者
 海洋生物の生育の場――マングローブ林の破壊
 沿岸海域の汚染
 塩類の沙漠と水飢饉
 食べ物も水もない――被害は女たちに集中する
 持続可能なクルマエビ養殖
 第二の「青の革命」
 環境正義への長き道のり
第4章 狂った牛と聖なる牛
 牛乳生産機械の性能を上げる
 あらゆる生き物の食糧としての作物
 集約的家畜経済
 境界を破る――草食動物を肉食動物に変身させる
 BSEの流行――種間の障壁を越える
 新たな人種隔離政策――汚染された牛肉の南側への輸出
 菜食者を牛肉食者に変身させる
 インドの畜牛を輸出用にと畜する
 マクドナルド化
 エコロジー的文化と工業的文化の隠喩
 世界のマクドナルド化を逆転させる
第5章 種子の盗まれた収穫
 単一種大面積栽培と独占
 ターミネーターの論理――完全な支配を作り上げる
 種子の横取り
 カナックの略奪
 世界貿易機関と生物資源略奪の促進
 特許と警察国家
第6章 遺伝子工学と食糧安全保障
 「世界を食べさせる」
 持続可能性という幻想を作り上げる
 農薬使用の減少という神話
 収量と収益の増大という神話
 遺伝子組み換え種子の社会経済的コスト
 安全な食品という神話
 食糧安全保障の神話
 生物多様性の破壊
 遺伝子汚染の危険性
 毒性植物――スーパー害虫を作る秘訣
 バイオセーフティの政治学
 バイオセーフティ法の転覆
 生物多様性を育てる
 遺伝子工学と食糧安全保障
第7章 食糧民主主義を取り戻す
 有機農業運動
 遺伝子工学に反対する運動
 種子を救え
 モンサントキャンペーン
 同盟を構築する
あとがき
 盗まれた収穫を取り戻す
訳者あとがき
原 注
索 引

訳者あとがき
シヴァについて
 本書はヴァンダナ・シヴァ(Vandana Shiva)著、Stolen Harvest: The Hijacking of the Global Food Supply(二〇〇〇)の全訳です。著者について少し紹介しておきます。ヴァンダナ・シヴァは一九五二年、インドのウッタランチャル州に生まれ、カナダのウエスタン・オンタリオ大学で物理学を専攻し、量子力学研究で博士号を受けました。「序」で語られているように、一九八〇年代から、農業問題、環境問題、社会問題の研究と実践活動に関わるようになります。研究と連動した社会運動の基地として一九八二年に「科学・技術・エコロジー研究財団」を設立し、これまでに三〇〇本を超える専門的論文を発表し、二〇冊に及ぶ本を著者・共著者として出版してきました。
 一九九三年に、もうひとつのノーベル賞と呼ばれる「ライト・ライブリフッド(正しい生活)賞」を受け、同じ年に、国連環境計画の「グローバル500賞」と「アースデイ国際賞」を受賞。グローバル化した経済体制の痛烈な批判者として、農民運動や市民運動の活動家として世界的に知られる、現代の代表的知識人の一人です。二〇〇三年に来日しています。
 邦訳のあるシヴァの著作は以下の通りです。

・『生物多様性の保護か、生命の収奪か――グローバリズムと知的財産権』(奥田暁子訳、明石書店、二〇〇五)
・『生物多様性の危機――精神のモノカルチャー』(戸田清・鶴田由紀訳、明石書店、二〇〇三)
・『ウォーター・ウォーズ――水の私有化、汚染、そして利益をめぐって』(神尾賢二訳、緑風出版、二〇〇三)
・『バイオ・パイラシー――グローバル化による生命と分化の略奪』(松本丈二訳、緑風出版、二〇〇二)
・『緑の革命とその暴力』(浜谷喜美子訳、日本経済評論社、一九九七)
・『生きる歓び――イデオロギーとしての近代科学批判』(熊崎実訳、築地書館、一九九四)

 彼女の業績や仕事については、同じ明石書店から出版されている『生物多様性の危機』の訳者あとがきで詳しく解説されているので、そちらを参考にしてください。

本書について
 世界の栄養失調児童の半数以上はインドに集中しています。ところがインドは、近年ハイテク産業で注目されるようになりましたが、基本的には現在でも大農業国であり、農村人口は国民の七割を占め、就業人口の六割は農業に従事しており(二〇〇二年時点)、コメ、サトウキビについては世界第二位の生産量を誇っているのです。そんな国でなぜ深刻な食糧不足が起こるのでしょうか。食糧不足に苦しむ発展途上国を収量の飛躍的増大を実現して救うと宣伝された「緑の革命」はどうなってしまったのでしょう。
 著者のシヴァは、インドの抱える食糧問題の根本に、グローバル化した経済と、巨大なアグリビジネスによる資本の暴力の問題があることを暴露します。資本を有効に投資して一定期間内に目標の利潤を確保すること。これが資本の論理であり唯一の行動原則であって、それ以外は全て枝葉末節の問題です。購買力のない、現金を持たない多くの国民が飢える一方で、倉庫では買い手のつかない大量の穀物が腐るままに捨て置かれている現状こそが、いわゆる「市場原理」なるものの正体なのです。
 インドは民主主義体制の国ですから、政府や議会は国民の生命・生活・財産を守るのが建前であり、選挙によって委託された権限をその限界内で適切に行使することになっているわけです。また不正や不法行為があれば、国民は裁判所に訴え出て、司法の公正な判断を仰ぐこともできます。ところが政府、議会、司法を握る少数のエリートが資本と結託して、金銭その他の報酬目当てに国民の福祉を無視したらどうなるでしょうか。資本のむき出しの暴力に、国民は直接曝されることになるでしょう。それどころか、国家が資本の言いなりに国民を強制することにもなりかねません。抵抗する農民や漁民や一般市民は、警察のような国家の権力執行装置によって弾圧されるでしょう。シヴァと同じインド人の作家であり、社会批評家のアルンダティ・ロイは、このような外国資本と国内エリートの結託が生む社会構造が、実は、イギリスがインドを支配していた時代と一向に変わらない、植民地主義体制そのものなのだと指摘しています。
 シヴァは、インドを標的にした西側資本の国際アグリビジネスが、インドの食糧生産体制をどのように破壊し、植民地化しようとしているのかを、農業、漁業、牧畜を例にとって、具体的に説明してゆきます。農業における「緑の革命」(第1章)、漁業における「青の革命」(第3章)、牧畜業における「白い革命」(第4章)の実態がどのようなものであり、それが宣伝文句とは裏腹に、人々を飢えさせ、生活を破壊し、生命を奪うものであることを、実例に即して具体的に批判します。
 具体的に批判することはとても大切です。なぜなら詐欺師の口上は常に美辞麗句で飾られているからです。抽象的なうたい文句は一見分かりやすく、夢があり、表面的な感性に訴える力があるからです。明日にでも理想の暮らしが実現するような気分にさせるからです。この最新のやり方を見習えば、収穫が増え現金収入を手にして、小農民でも貧困から脱出するチャンスが生まれるような気持ちにさせられます。
 そのような最新の夢の商品が遺伝子組み換え作物であり、遺伝子組み換え種子(GM種子)なのです。最新のバイオテクノロジーを駆使することで誕生し、世界の食糧問題を将来に亘って解決すると宣伝された「夢の種子」が、本当はどのようなものなのか。分析を進めてゆくと、遺伝子組み換え作物に作付け転換しても、実際には収量は増大せず、農薬の使用を減らすこともできず、それどころか、「遺伝子汚染」という禍根を将来に残すことにもなりかねないことが分かってきます。
 遺伝子組み換え作物に対するシヴァの批判は執拗であり、第5章、第6章のほとんどを使って、様々な面から「夢の種子」が実は「悪夢の種子」であることを証明してゆきます。彼女が遺伝子組み換え作物批判を重視するのは、それが、生物進化が気の遠くなるほどの時間をかけて実現してきた生命のバランスと多様性を根本から破壊するものであり、農民たちの先祖代々からの営々たる努力の末に生まれた、農業の生物多様性を破壊するものだからです。シヴァは、生物多様性の保全にこそインドの伝統的農業の真髄があり、そのような農業こそが将来に亘る食糧生産の持続性を保障すると考えています。だからこそ遺伝子組み換え作物に徹底的に反対の意を唱えるのです。
 この「夢の種子」を使った遺伝子組み換え作物への転換は、種子会社が独占的に契約販売する種子ならびに、種子とセットになった特定農薬の強制的購入によって、多額の資本投下を強いることで農民を借金漬けにする「緑の革命」の弊害が、加速度的に深刻化することを意味します。今年(二〇〇六年)インド政府は、遺伝子組み換え綿花(一五八ページ)不作の影響で負債を返済できなくなった農民の自殺が、一九九三年から二〇〇三年の間に一〇万人以上を数えたという、衝撃的な発表を行いました。一〇万人の自殺者という数字は只事ではありません。しかも、自殺した農民の多くは、農薬会社から借金をして購入した農薬をあおって自ら命を絶ったのです。
 このような悲惨な現実を前にして、シヴァは決して絶望しません。名もなき農民、漁民、一般市民が力を結集すれば、必ず現実を変えられると主張します。国際資本の根拠地である金持ち国の消費者と第三世界の生産者の断絶は巨大ですが、両者が連帯しない限り問題が決して解決しないことを、彼女はよく理解しています。実は先進諸国の消費者も農民も、その形態や程度の違いこそあれ、同じように被害者なのです。だからこそシヴァは、多国籍アグリビジネスの暴力をはね返し、将来に亘る持続的食糧供給を実現するためには、「食糧民主主義」を世界レベルで確立する必要があると訴えます(第7章)。つまり巨大資本による経済のグローバル化は、市民的連帯のグローバル化によってのみ克服できると主張するのです。
 本書全体を通じてシヴァの論述は徹底して科学的です。科学的という意味は、難しい数式や専門用語を多用するといったことではありません。事実を尊重し、仮説を数多くの事実で検証しながら、論理的に筋を通すという態度を断固として貫くことです。このような科学者としての原則に基づいているからこそ、批判に説得力が生まれるのです。批判ばかりではありません、同じ態度から、インドの伝統的な農業や漁業の優れた点を鮮やかに論証する、見事な論述が生まれるのです。本書から我々日本人が学ぶべきことはたくさんあると思います。

竹内 誠也
金井塚 務