出版社内容情報
タイの都市スラムの居住環境改善のために、こどもと大人が協働して諸活動を行い、一歩ずつ確かな住まいと暮らしを得、健全で豊かなコミュニティの構築はできないのか、その可能性を理論的かつ実践的に探る。
序 章
研究の対象範囲とキーワードの定義
第1部 都市スラムにおける住民参加とこども参加
第1章 都市の貧困対策と都市スラムにおける住民参加の歴史
はじめに
1 タイにみる貧困問題と住民参加の歴史
2 民主化に伴う「市民社会」の生成とNGOの社会参加
3 本章のまとめ
第2章 社会開発論の展開と住民参加
はじめに
1 内発的発展論と住民参加の重要性
2 持続可能な人間中心型の開発と住民参加
3 住民参加によるエンパワーメントとソーシャル・キャピタルの蓄積
4 住民参加の手法と「外部者」との関係性に関する課題
5 本章のまとめ
第3章 権利としてのこどもの参加とエンパワーメント
はじめに
1 こども観の歴史的変遷と児童福祉
2 権利としてのこどもの参加
3 まちづくりへのこどもの参加とエンパワーメント
4 本章のまとめ
第2部 居住環境改善活動と住民組織(CBO)のネットワーク形成
第4章 タイの都市スラムにおける居住環境改善政策とネットワーク形成
はじめに
1 タイの都市スラムの居住環境改善政br> 1 タイにおけるこどもの支援の現状
2 こどもの参加の実践事例とミクロ的ソーシャル・キャピタルの現状
3 SCATによるミクロ分析のまとめ
4 本章のまとめ
終 章 都市スラムの居住環境改善と持続可能なまちづくりに向けて
あとがき
【資 料】
本論文に関する研究業績等
都市スラムの青少年に対する質問票(日本語訳)
都市スラムの大人に対する質問票(日本語訳)
索 引
序 章
人口増加がとりわけ激しい開発途上国の都市の巨大化は、緊急を要する今日的課題である。中でも、都市スラムの居住環境の悪化は深刻さを極めており、守られるべきこどもたちが苦境に追い込まれ、犯罪に巻き込まれたり、居場所を失ったりするケースが跡を絶たない。その原因は、特に近代化論に象徴されるような、経済を偏重する開発政策が先進諸国によって開発途上国に持ち込まれることにより、南北間にさらなる貧富の格差を生み出してきたものと考えられる。
こうした問題意識を背景に、本研究では都市スラムの生成と改善の歴史、現状と課題を整理し、「住民参加」によるスラムの居住環境改善という全体の中で「こども」を捉え、「こども参加」を位置づける。そして、タイの都市スラムの居住環境改善に着目し、コミュニティ内の諸活動にこどもと大人が参加し、双方の関係性によって一歩ずつ確かな住まいと暮らしが確保され、健全で豊かなコミュニティを構築できる状況を整えられないのか、その可能性を理論的かつ実践的に探る。
本論の研究目的は、下記の4点である。
(1)タイの社会・文化的背景における住民参加の理念、意義、目的、方法論の形成過程と、権利としてのこどための居住環境との関係を明らかにし、青少年と大人の居住環境改善活動への参加度とコミュニティへの帰属意識との関係について比較検討する。そして、こども参加の実践事例も活用し、都市スラムを改善する上で今後どのような住民参加の状態が望ましいのかを精査する。
(4)タイの都市スラムにおけるこどもの参加と居住環境改善活動の実践的考察
前記の3つの目的に加え、今日のタイ社会のこどもたちを取り巻くマクロ的な社会環境の変化を踏まえて、CBOやNGOの手によって実践されている青少年を中心とする居住環境改善活動の4つの事例を分析して課題と展望を明らかにし、全体のまとめとして今後の都市スラムにおける持続可能なまちづくりのあり方について提言する。
研究の調査方法は、文献調査(第1章~第3章)、インタヴュー(第4章~第6章)、質問票(第5章)、ワークショップの実施(第6章)、ケーススタディ(第7章)と、観察(第4章~第7章)が主であり、質問票についてはStatistic Program for Social Science(SPSS)を使用して統計分析を行った。また、ワークショップについては主体的参加型農村調査手法/主体的参加による学習と行動(PRA/PLA)手法を、ケーススタ
目次
第1部 都市スラムにおける住民参加とこども参加(都市の貧困対策と都市スラムにおける住民参加の歴史;社会開発論の展開と住民参加;権利としてのこどもの参加とエンパワーメント)
第2部 居住環境改善活動と住民組織(CBO)のネットワーク形成(タイの都市スラムにおける居住環境改善政策とネットワーク形成;居住環境改善活動への青少年と大人の参加;青少年向け参加型ワークショップによるコミュニティ査定)
第3部 こどもと大人の参画による持続可能なまちづくりをめざして(こどもの参加と居住環境改善活動の実践事例)
都市スラムの居住環境改善と持続可能なまちづくりに向けて
著者等紹介
秦辰也[ハタタツヤ]
1959年、福岡県生まれ。米国サウスウエスタン・ルイジアナ大学を卒業後、会社員を経て84年から曹洞宗ボランティア会(SVA)に参加、バンコクに赴任。インドシナ難民、タイ山岳少数民族、バンコクの都市スラム問題などに取り組む。87年、タイの社会福祉活動家、プラティープ・ウンソンタム(現上院議員)と結婚。同会バンコク事務所長、アジア地域事務所長、事務局長などを経て、現在は(社)シャンティ国際ボランティア会(SVA)専務理事。アジア工科大学大学院(AIT)人間居住開発学科修士課程、東京大学大学院都市工学専攻博士課程修了。『バンコクの熱い季節』(岩波同時代ライブラリー、1993年)でアジア・太平洋賞特別賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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