言語過程説の探求〈第1巻〉時枝学説の継承と三浦理論の展開

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  • サイズ A5判/ページ数 412p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784750320267
  • NDC分類 801
  • Cコード C0310

出版社内容情報

「言語は人間の表現行為そのものであり、また理解行為そのものである」――主体性という観点から独自の言語学、国語学を創始した時枝誠記、その時枝言語学をさらに飛躍的に展開させた三浦つとむ。彼らの言語学を、日本語の内在的考察だけでなく英仏語との比較検討、詞辞・品詞・関係詞・時制などの文法、さらに差別語・差別表現や自然言語処理など様々な角度から探求する。一般に流布する「コミュニケーション・ツール、差異の体系としての言語」観を一変させる、めくるめく「主体性」の言語世界。

まえがき(佐良木 昌)
第1部 認識と表現の探求
主体的言語学の意義――言語表現の二重性の発見(小川文昭)
第一章 言語過程説/第二章 言語と言語学/第三章 主体的立場と観察的立場/第四章 詞と辞の統一
国語と英語の文の構造――対峙認識とその表現(上田博和)
第一章 対峙認識――絵画と言語の連関的把握/第二章 対峙認識の表現――国語と英語の文の構造
第2部 品詞論の探求
無活用動詞論――漢語外来語の属性概念表現(上田博和)
序/第一章 〈形容詞〉的な内容の漢語外来語/第二章 〈動詞〉的な内容の漢語外来語/第三章 三浦静詞論の動詞への適用
関係詞論――〈代名詞〉論の批判的検討(鈴木 覺)
序論/第一章 関係詞の本質――〈代名詞〉(pronom)とは何か/第二章 人称関係詞――〈人称代名詞〉の再検討/第三章 遠近関係詞――〈指示代名詞〉の再検討/第四章 不定称関係詞――〈疑問詞〉の再検討/第五章 〈不定代名詞〉と〈不定形容詞〉の再検討/若干の補遺と結び
第3部 時称論の探求
フランス語時称体系試論(鈴木 覺)
まえがき/はじめに/第一章 言語表現の成立条件/第二章 時称とは何か/第三章 現在形機械翻訳/あとがき
初出一覧
編著者紹介

まえがき  佐良木 昌
一 本書は言語学および自然言語処理の分野において学的探求を続けている研究者による論文集である。今回第一巻である本書を刊行すると共に続巻を予定している。各巻各論考の執筆者はそれぞれ独自に学的研鑽を積み重ねているが、時枝誠記が提唱した言語過程説を批判的に継承し発展させるという立場を同じくしている。観念弁証法の転倒と同様に言語過程説を唯物論的に改作し認識と言語の科学的理論を確立する、あるいは精神現象学および純粋現象学への唯物論的批判を通じて言語と意識とを物質の現象学として把握する、あるいは感性的労働の論理を基礎として、言語活動者の主体的活動において言語表現を捉える、あるいはまた自然言語処理などの技術論・技術学の領域において言語過程説を展開するといった、それぞれの視点で執筆された諸論考が、本巻および続巻に収録される。

二 本書第一巻には八論文を収めた。認識と表現、品詞論、時称論、関連領域への展開の四部に分け、それぞれ二論文で構成した。
 第1部「認識と表現の探求」に収めた小川論文では、言語過程説における詞と辞との二大区分について、普遍性と個別性という言語表現が有する論理的二重性の観点係詞、遠近関係詞、不定称関係詞)という文法体系を提案している。本論考は、代名詞は語の代わりをするものという俗流論を根底的に批判して従来の代名詞体系に終止符を打つものである。
 第3部「時称論の探求」に収められた鈴木論文では、表現主体と表現対象との時間的関係の認識を表現したものとして時称の本質を明らかにしている。同時に、「表現対象相互間の時間関係」と、「表現主体と表現対象との間での時間的関係」とを区別するという時称表現分析の基本視座を据え置いている。この明晰な基本視座から、時称表現の過程的構造が本質論レベルで解き明かされると共に、個別言語分析に適用してフランス語の時称表現総体が体系的に把握されている。
 同部に収録の矢吹論文では、固定像・静止像・運動像という認識深化の一般運動過程を措くと同時に、英語文化においては、運動過程全体を網羅的に表す「運動環像」および運動の特別相が運動途上にあるさまを表す「運動途上像」を措く。これらの認識論=表現論的根拠から、1動詞の原形とは運動環像を直接表現する語形であり、2現在時制表現とは、表現主体が把持している客体的認識と自己の認識内容は正しいという自己確定である主体的認識とが方法が理論的に考察されている。この考察では、さらに概念および単一概念・複合概念と表現との問題にも精密に言及がなされている。(後略)

内容説明

本書は言語学および自然言語処理の分野において学的探求を続けている研究者による論文集である。

目次

第1部 認識と表現の探求(主体的言語学の意義―言語表現の二重性の発見;国語と英語の文の構造―対峙認識とその表現)
第2部 品詞論の探求(無活用動詞論―漢語外来語の属性概念表現;関係詞論―“代名詞”論の批判的検討)
第3部 時称論の探求(フランス語時称体系試論;英語の現在時制解明への新視点)
第4部 社会言語学、自然言語処理への展開(差別語・差別表現の本質;自然言語処理と言語過程説)

著者等紹介

佐良木昌[サラキマサシ]
日本大学経済学部非常勤講師。1947年生まれ。南クイーンズランド大学大学院G.C.修了
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