出版社内容情報
批判的な社会運動理論誌として論壇にさまざまな影響を与えてきた『現代の理論』が季刊誌として復刊。装い新たに21世紀の諸問題に取り組む。
総特集 日本どこから どこへ1
特集のことば
目次
創刊の辞
創刊記念対談◎ヒトは、いかなる星のもとに生きるのか――人類史の岐路に立って(尾本惠市[東京大学/国際日本文化研究センター名誉教授]×沖浦和光[桃山学院大学名誉教授])
「戦後」は終わらせない――「戦後」の再定義をめぐって(橘川俊忠[神奈川大学教授])
日本経済どこから どこへ――グローバリゼーションの狭間で彷徨う日本(小林良暢[グローバル総研所長])
現代日本における抵抗の論理――戦後日本社会運動の総括への視点(千本秀樹[筑波大学教授])
「戦後日本」の夢を抱いて――一九四五年生まれ 新聞記者(早野 透[朝日新聞コラムニスト])
護憲は「保守」か――改憲論そんなに急いでどこへ行く?(古川 純[専修大学教授])
『現代の理論』と社会民主主義――一九八九年を出発点とするための試論(住沢博紀[日本女子大学教授])
非営利革命の理論――ボランタリー経済への三つのアプローチ(宮崎 徹[法政大学兼任講師])
経済のグローバル化と新たな市民社会への動き――芽生える個人が自立して生き、行政が支援する社会(大沢真知子[日本女子大学教授])
特集のことば
理論の目的は、世界を認識するための鋭利な道具たることにある。そして、世界は、ますます複雑な相互依存関係の網を広げており、地球上のどこかで起こったことが思わぬところに大きな影響を与える構造になっている。理論は、そういう複雑かつ錯綜した関係を整序し、切り裂き、体系的に組み立て直さなければならない。その理論的思考の対象はもちろん全世界であるが、一挙に全世界の認識に到達することは不可能である。全世界との関連を頭に入れつつ、まず足元の現実をしっかり見定めるところから出発しなければならない。現実は複雑な相互依存関係の網の目によって足元から全世界へとつながっているが故に、足元の分析から糸を手繰るようにして全世界へと思考の幅を広げ、認識を深めていくこともできるのである。
われわれにとっての足元とは、なによりもこの日本の現実である。日本が、今何処にいて何処へ行こうとしているのか、そのことをまずしっかりと考えよう、ということでこの特集を組んだ。かつて、新たな出発点として考えられた「戦後」がどうなっているのか。なにがどう変わり、どう変わらないのか。約六十年の歳月を念頭に置きながら、また、現在問われている問題を