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出版社内容情報
子どもが「障害児化」され、「障害児は増やされている」。発達障害の名の下にノーマライゼーションのポーズを取りながら「特殊教育」そのものの管理支配を目指す文部科学省。「特別支援教育」の中に潜む、「共に学ぶ教育」の否定という本質を告発する。
はじめに
序 章 障害児は増えているのか
第1章 障害児教育をめぐる困惑の諸相
1 「特別支援教育」の本質
2 タテマエとしての「インクルージョン」
3 文部科学省の困惑
4 この時、とばかりの地方教育委員会
5 専門家の知ったかぶり
6 学校現場の困惑
第2章 インクルージョンの要注意
1 障害児教育行政の硬直化
2 逆行の図式
3 インクルージョンの内容の点検
第3章 地域社会の日常と「新障害者基本計画」――「施設から地域生活へ」と言う前に――
1 「脱施設」の方向で
2 ほんとうに「脱施設」なのか
3 障害者にとっての日常性
第4章 より重度な障害者にされないために
1 ただひとつの道
2 きめつけの中での人生
3 俯瞰図として見る障害者の生活
4 周囲が描くイメージで生活が変わる
第5章 「やりとりの障害」を持つ自閉症者とのやりとり――家族なりのしのぎ方の例として――
1 スムーズな生活の流れ
2 TEACCHでなくても生きられる
3 日常の授業における自閉症児
4 折り合いをつけるところまで
5 相手の意図を汲みとる
6 相手の「異なる心」への共
はじめに
新聞の「脱施設」という文字によって障害者関係者は驚かされましたが、「特殊学級がなくなる」という記事も衝撃的でした。
文部科学省は、これまでの「特殊学級」から、「LD(学習障害)」など軽度発達障害の子どもを含めた『特別支援教育』」への転換を打ち出しました。すなわち、障害児たちは通常の学級(普通学級)で学びながら専門家の巡回指導を受けたり、特別支援教室で訓練を受けることになります。だから、障害児学級はなくなるのだというのです。
ある障害児の母親はこの記事を読んで考えました。就学を目前にひかえたわが子は、重度の肢体不自由と知的障害を併せ持っています。そのために、教育委員会から養護学校に通わせるよう就学指導を受けていました。それをなんとか校区の小学校の障害児学級に通えるようにと、教育委員会と話しあっているところでした。しかし、報道通りに特別支援教育が実施されれば、どの障害児も通常の学級で生活できるようになるのだから、わが子も校区の小学校に通わせることができる、と。
さっそく教育委員会に出かけてそのことを話しました。ところが、「特別支援教育というのは、あなたの子どもさんのような障害児が対象ではだけでなく、LD・ADHD・高機能自閉症を含めて」「障害のある子どもを生涯にわたって支援する」と記されている。
3 「個別の教育支援計画」の対象範囲に、「視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由」等も含まれている。
これだけを読むと、「障害児学級がなくなって、どんな障害児も普通学級に在籍して、特別支援教育を受けることになる」と理解するのも自然のことです。私もはじめはそう思っていました。ところが、
4 二〇〇三(平成一五)年度からはじまった「特別支援教育体制モデル事業」は、「平成一九年度までを目処に、すべての小・中学校においてLD、ADHD、高機能自閉症の児童生徒に対する支援体制の整備を目指すもの」と限定されている。
結局、LD・ADHD・高機能自閉症に限定されてしまっています。
これらの文言と、文科省の二〇〇二年四月二四日付の政令一六三号「小・中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める者」(認定就学者)を照合して検討してみると、従来からの知的障害児や重症の肢体不自由児たちは、当然、通常の学級には通えませんから、特別支援教育の対象にはなりえません。
かな中学校の一〇%を超える三六〇〇校を対象に、校内委員会の設置、教育委員会における専門家チームの設置、巡回相談の実施を進めていこうとするものです。二〇〇九年度には、全国すべての小・中学校でこの体制を実現したいと考えています。
モデル校で大まじめに取り組みをはじめている学校があることは、『LD&ADHD』三号(『障害児の授業研究』別冊)等に目を通せばよく分かります。しかし、多くの学校では、推進のための予算もつかず、教員の増員もないままに、むやみと書類作成のための事務量が増えるばかりですから、適当にやり過ごしているのではないでしょうか。カネをかけないところでの形だけの「教育改革」のいかがわしさを、現場の教師たちは見抜いているからです。
もうひとつだけ、問題点にふれておきましょう。昨今、日本の社会構造はあらゆる側面で、人間や組織を「勝ち組」と「負け組」に分離するところで成り立たせようとしています。その感覚が障害児の世界にも及びはじめているのではないでしょうか。
LD・ADHD・高機能自閉症の子どもたちは、今後はかなり充実した教育的・生活的状況に置かれていくことになりそうです(当然のことですが)。反対に、それ
目次
序章 障害児は増えているのか
第1章 障害児教育をめぐる困惑の諸相
第2章 インクルージョンの要注意
第3章 地域社会の日常と「新障害者基本計画」―「施設から地域生活へ」と言う前に
第4章 より重度な障害者にされないために
第5章 「やりとりの障害」を持つ自閉症者とのやりとり―家族なりのしのぎ方の例として
著者等紹介
宮崎隆太郎[ミヤザキリュウタロウ]
種智院大学客員教授。1961年、京都学芸大学を卒業後、小・中学校教員、指導主事として、37年間の大半を障害児教育と障害者運動に関わる。その後、種智院大学教授を6年間務め、現在に至る
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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