明石ライブラリー
21世紀 アジア都市の未来像―シンガポール人建築家の挑戦

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  • サイズ B6判/ページ数 266p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750319612
  • NDC分類 518.8
  • Cコード C0336

出版社内容情報

東西文化の出会い、伝統と現代、人と環境、都市と国家、世界。さまざまな物、人、価値が交錯するアジアの都市にどのような都市計画、建造物を創造するか。経済の発展の行き着く先の混乱ではなく、人びとと文化が出会う都市をどのように残していくか。

はしがき
日本語版まえがき
著者紹介:ウイリアム・S・W・リム

第一章 ル・コルビュジェから多元論へ――ウイリアム・リム:あるシンガポール人建築家の軌跡
アジア経済成長/シンガポールの経験/シンガポールの建築/建築への旅/まとめ
第二章 アジアのニューアーバニズム
アジアのアーバニズムの今日/グローバルな展開/伝統と近代/危機と挑戦/まとめ
第三章 東南アジア都市における建築の将来
はじめに/最先端技術/予測されうるシナリオ/これからの建築の方向性/二○○○年を超えて
第四章 都市開発における土地政策――流動変化する価値をめぐって
最先端技術/流動変化する価値/地域社会の利益 対 個人と公共の利益/まとめ
第五章 人間のための都市と建築における多元性
変化の速度/アーバニズムにおける最新技術/人間のための都市/建築における多元文化主義/まとめ
第六章 デザイン革命
第七章 現代文化+遺産=地域主義
はじめに/一元論への挑戦/現代の多元的文化/バランスとしての遺産/まとめ
第八章 ニューアーバニズムに向かって――経済成長地域の人口密集地域における新しい都市居住のあり方の探求

危機的命題
人間のための都市/自動車とモビリティー/自己充足性と都市拡大の限界/経済的資源としての土地/建築における多元主義/まとめ
第十四章 現代的ヴァナキュラー――多元的世界における建築の選択肢
はじめに/建築とアーバニズム/アジアの新興経済国/現代的ヴァナキュラー/現代的ヴァナキュラーの限界/まとめ
第十五章 シンガポールの開発と文化を超えて
はじめに/開発志向の国々/伝統,文化、近代/情報資本主義/まとめ

ウイリアム・リム――用語集
訳者あとがき

訳者あとがき 宇高雄志
 訳者のシンガポール国立大学での滞在も、終わりにさしかかった頃、ウイリアム・リム氏との面談はふとした拍子に実現した。私の友人は、氏を評して「彼は挑戦し続けている。もちろん、あなたは彼の冒険につきあう必要はない。しかしそれでは人生楽しくない。楽しんでらっしゃい」。この意味深なメッセージに背を押され、おっかなびっくり彼のオフィスに向かった。常夏シンガポール。緑滴る町並み。目眩させられる高層ビル群。氏のオフィスの入るビルは、その一角にたたずんでいる。
 ウイリアム・リム氏は、たえず先端を走り続ける建築家である。豊かな白髪と深い声色は、どちらかというと、どこか哲人を思わせる。氏は建築家であると同時に、アジアのアーバニズムを牽引するイデオローグである。
 氏の都市へのコミットメントは永い欧米での生活を終えた一九六○年代から始まる。一貫した、アジア都市へのまなざし、洋の西と東、伝統と現代、人と環境、都市と国家、そして世界。その明快な語りと取り組みは、氏とそのグループが発した「Spur」以降、なんら変わることがない。彼の、そして私たちの「アジア」が、どれほど変わろうとも。
 永い永い英国によ> 氏のアジア都市に向けた視線は、未来に向けられている。例えば「都市遺産の保存」は、それそのものが目的化されて語られることはない。アジアのアイデンティティー、そしてモダニティ。東洋と西洋、そしてポリティクス。シンガポール遺産協会は氏が中心となって立ち上げた。地域主義に根ざした地道な取り組みの向こうに、壮大なパースペクティブが浮かび上がる。
 氏のアジア都市に向けた言説だけではなく、氏の作品には学ぶところが多い。氏の初期作。ピープルス・コートは歴史的な町並みの保存地区のチャイナタウンに隣接して屹立する。正直、巨大な商業施設といえばそれまでだ。しかし、そこには皮肉なことに、美しく「保存」されたチャイナタウンにはもうない、ほんものの雑踏がある。そして「アジア」がある。市井のシンガポリアンの、生き生きとしたふつうの暮らしがある。氏の作品は、そんな人々の暮らしを支えてきた。
 氏の活動は、もちろん過去にとどまらない。若手への教育にも向かう。広くアジアの次世代の芸術家を育てる、ラサール・SIAの理事をつとめ、講演で世界各地を駆けめぐる。アジアを世界に相対化させる作業。それがウイリアム・リムの仕事であり続けている。

目次

ル・コルビュジェから多元論へ―ウイリアム・リム:あるシンガポール人建築家の軌跡
アジアのニューアーバニズム
東南アジア都市における建築の将来
都市開発における土地政策―流動変化する価値をめぐって
人間のための都市と建築における多元性
デザイン革命
現代文化+遺産=地域主義
ニューアーバニズムに向かって―経済成長地域の人口密集地域における新しい都市居住のあり方の探求
伝統と近代
都市の歴史的環境の保存―シンガポールを中心に
ニューアーバニズムにおける「ファジー・ヴィジョン」
アジア都市における変化への挑戦
アジア都市の危機的命題
現代的ヴァナキュラー―多元的世界における建築の選択肢
シンガポールの開発と文化を超えて

著者等紹介

リム,ウイリアム・S.W.[リム,ウイリアムS.W.][Lim,William Siew Wai]
建築家、都市論者。英国AAスクール、ハーヴァード大学大学院修了。その後、シンガポールにおいて、建築設計事務所ウイリアム・リム・アソシエーツを主催。1965年にアジアの都市化と開発を論ずるSpurを結成。中心メンバーとして活躍。独立以降、貧困と混乱に悩み、70年代から一転して目覚ましい経済成長を続けるシンガポールにおいて、いち早く所得格差の拡大や、女性問題、言論問題、環境破壊、伝統の喪失などに関して先駆的なコメントを行ってきた。また、シンガポール国立大学ほか、世界の主要大学において客員教授をつとめるなど、後進の育成にも当たってきた。また建築設計では、国際的な賞を数多く受賞している

宇高雄志[ウタカユウシ]
1969年兵庫県生まれ。建築学、都市計画学を専攻。マレーシア科学大学、京都大学などで学ぶ。1997年に博士。その後、広島大学にて勤務。シンガポール国立大学研究員、マレーシア科学大学研究員。建築学会・論文奨励賞(2003年)、同・設計競技優秀賞(1995年)などを受賞
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感想・レビュー

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TAKAMI

1
AAスクールで学んだシンガポール人建築家かつ現代アジアのアーバンスタイルについてのイデオローグでもある著者による、21世紀のアジアの発展に向けての啓蒙と問題提起。西洋で発展した都市計画の問題点を認識し、アジアで現代的ヴァナキュラーを追求する、こういう人が今のシンガポールの発展に関わってきたのだなとわかった。20世紀末に書かれたこの本で著者が述べているシンガポールはモダンで清潔で効率的だが退屈、これからは創造的な場所にしないといけない、というのは今まさしく実践しているね。2015/07/10

せつな

0
多元論的な世界の流れの中で、アジアの都市における「今」を見つめた都市評論。欲を言えば、具体的な都市開発アプローチにもう少し触れて欲しかったかも。2013/01/24

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