出版社内容情報
簡易審査・融資等、安易な借金を促すサラ金。ヤミ金融は登録業者となり、一日二十割という超高金利も出現。一方、銀行は貸し渋りが横行し、社会的弱者は多重債務に陥り自殺にまで追い込まれる。長年被害者救済に取り組んできた著者がこの問題の解決策を提示。
はじめに
第1章 ヤミ金融の実態
1 深刻化するヤミ金融被害
(1)大阪府八尾市におけるヤミ金苦心中事件 (2)多発するヤミ金苦による自殺
2 ヤミ金融とは何か
3 ヤミ金融のターゲット
(1)多重債務者 (2)自己破産者 (3)商工ローンを利用している中小零細事業者
4 多様化・巧妙化するヤミ金融の手口
(1)勧誘の手口 (2)ヤミ金融の種類 (3)ヤミ金融まがいの手口
5 暴力的・脅迫的取り立てが横行
6 暴力団やエセ右翼団体の資金源
7 ヤミ金融激増の背景
第2章 ヤミ金融対策法の概要と問題点
1 ヤミ金融対策法の早期制定を求める運動
2 ヤミ金融対策法の概要
(1)開業規制の強化 (2)広告・勧誘行為規制の強化 (3)第三章の規定の無登録業者への適用 (4)取立行為規制の強化 (5)行為規制の追加 (6)貸金業務取扱主任者制度の創設 (7)高金利を定めた金銭消費貸借契約の無効 (8)罰則の強化 (9)施行
3 ヤミ金融対策法の問題点
(1)「元本返済不要」規定が入らなかったこと (2)出資法の上限金利見直しの先送り (3)法の執行態勢強化の重要性
第3章 ヤミ金融撃較
(1)高利貸しが横行する日本社会 (2)諸外国はどうなっているか (3)金利規制の必要性 (4)高金利が生み出す過剰融資、押し付け融資 (5)非人間的な取り立てが横行 (6)武富士盗聴問題から見えてくるサラ金業界の高利貸し体質
2 サラ金CMとマスコミの問題点
3 銀行の責任
4 行政の責任
5 法治国家とはいえない日本
第5章 多重債務問題解決のために――高利貸しのない社会を
1 出資法の上限金利の引き下げ
2 利息制限法の制限金利の引き下げ
3 ヤミ金融の徹底的な取り締まりと被害者を孤立させない社会づくり
(1)地方自治体レベルの対策会議の結成 (2)警察の動き (3)銀行におけるヤミ金融口座解約の動きなど
4 多重債務者のための破産法改正
5 相談窓口の拡充と情報の普及
6 サラ金のテレビCMの中止
7 低利融資制度や社会保障制度の充実
8 多重債務問題に関する消費者教育の充実
資料
相談窓口/年表/クレジット・サラ金事件報酬基準/関連法規
はじめに
二〇〇三年は、多重債務問題にとって激動の一年だった。
六月一四日に大阪府八尾市で発生した男女三人のヤミ金苦心中事件を契機に、ヤミ金融の徹底的な取り締まりと根絶を求める世論と運動が大きく盛り上がり、七月二五日にはヤミ金融対策法(貸金業規制法と出資法の一部改正法)が成立した。
また、八月一一日には山口組五菱会系ヤミ金融グループの統括経営者で「ヤミ金の帝王」と呼ばれた元暴力団幹部梶山進が逮捕され、一〇月二四日には山口組総本部の捜索が行われた。一一月二六日には五菱会の高木康男会長が逮捕され五菱会は解散した。
ヤミ金融対策法の成立、山口組五菱会系ヤミ金融グループの摘発などにより、激増の一途を辿っていたヤミ金融被害は頭打ちとなり最近では減少傾向を示しているが、かわって架空請求・おれおれ詐欺・保証金詐欺などヤミ金融まがいの手口による被害が全国的に急増して大きな社会問題となっている。
一二月二日にはサラ金(消費者金融)業界最大手の武富士の会長で「サラ金の帝王」と呼ばれた武井保雄会長が、電気通信事業法違反(盗聴)容疑で逮捕され、激震が走った。この逮捕を契機として異常な会長独裁体制、社員の人権を無視済・生活苦による自殺の大半は、借金苦による自殺である。
借金苦による夜逃げや家出は、年間十数万人に上るだろうといわれている。多重債務者の中には、ホームレス(路上生活者)になる人も数多く存在する。
二〇〇三年初めの政府の全国調査によれば、公園や河川敷で生活している人(ホームレス)の数は全国五八一市区町村で二万五二九六人に上ることが明らかになっている。約二〇〇〇人のホームレスを対象とした面接調査では、路上生活を始める前は正社員だった人が四割を占めていたという。今やわが国では、ホームレスのいない都道府県はなくなっているのである。
しかし、決して諦めてはならない。
どんなに多額の借金を抱えていても必ず解決する方法がある。
クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金融の金利については、払わなくてもよい金利部分があるし、あまりにも高い金利は処罰され犯罪となる。この「払わなくてもよい金利がある」「あまりにも高い金利は犯罪となる」という意識が非常に欠落しているのが、わが国社会の問題点だ。
借金整理の方法としては、任意整理・特定調停・個人再生手続き・自己破産など、一人一人の負債額、収入、資産などに応じて
内容説明
多重債務者救済に奔走する現役弁護士が、高利貸し天国の闇を暴く。借金地獄から逃れるための必読の書。
目次
第1章 ヤミ金融の実態(深刻化するヤミ金融被害;ヤミ金融とは何か ほか)
第2章 ヤミ金融対策法の概要と問題点(ヤミ金融対策法の早期制定を求める運動;ヤミ金融対策法の概要 ほか)
第3章 ヤミ金融撃退法と債務整理法(ヤミ金融の見抜き方;警察や行政に積極的に申し立てる ほか)
第4章 高利貸し天国・日本(欧米との比較;サラ金CMとマスコミの問題点 ほか)
第5章 多重債務問題解決のために―高利貸しのない社会を(出資法の上限金利の引き下げ;利息制限法の制限金利の引き下げ ほか)
著者等紹介
宇都宮健児[ウツノミヤケンジ]
1946年生まれ。東京大学法学部中退。71年に弁護士登録、東京弁護士会所属。以後、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員長、東京弁護士会副会長などを歴任。現在、全国ヤミ金融対策会議代表幹事、全国クレジット・サラ金問題対策協議会事務局次長、地下鉄サリン事件被害対策弁護団長を務める
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