出版社内容情報
差別問題や明らかな誤りがあった場合において、本は絶版にできる!「サンボ」や、著者が一人で取り組んだ『自閉症 うつろな砦』(みすず書房)絶版の顛末を紹介するなかで、学問的誤りが出版活動を通して既存の差別を強化している様態を検証する。
「ちびくろサンボ」絶版再考―「『ちびくろサンボ』絶版を考える」を中心に
「自閉症 うつろな砦」絶版のてんまつ
「無人警察」教科書掲載と筒井康隆断筆騒動
「差別語」言い換えの一面
内容説明
本書は、差別と言葉、表現・出版の自由などが絡み合うところを中心に扱っている。いくつかの具体的な問題を検討することで、差別について考えた私的覚書といったものである。まだ粗雑なところが多く、話題も偏り過ぎているが、それでもなるべく一般的な広がりを持たせ、今日的な関心に訴えるよう努めたつもりである。
目次
「ちびくろサンボ」絶版再考―「『ちびくろサンボ』絶版を考える」を中心に
「自閉症うつろな砦」絶版のてんまつ
「無人警察」教科書掲載と筒井康隆断筆騒動
「差別語」言い換えの一面
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
時雨
2
みすず書房は1992年、20年近く刊行してきたブルーノ・ベッテルハイム『自閉症 うつろな砦』の絶版に踏み切った。原著の出版後に精神医学の見地から否定された自閉症心因説を前提としており、自閉症児とその家族に対する差別を煽る「有害図書」であるとして同書の非を列挙・糾弾する手紙を自閉症児の親、すなわち筆者が同社に送った結果のことだという。本書はある種苛烈な経験を明かすと共に、『ちびくろサンボ』絶版騒動や「無人警察」の教科書掲載、井上ひさし「差別語のための私家版憲法11条」を「差別表現」規制支持の立場から論じる。2021/01/25