内容説明
文化大革命の嵐の中で青春を送り、農村、山村での酷烈な生活をくぐり抜け今、時代が葬り去った情念を掬い上げる。草原の叙情詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とんこつ
2
原文で読了。9年の歳月を経て忘れられない人を求めて内モンゴルの故郷に帰る男の物語。過去と現在、そしてこの本のために拵えられた「黒駿馬」の歌、その3つを軸に物語は立体的に進んでいく。紆余曲折の果てに二人は再び出会うのだが、男が長年、終わりのない回想のなかに見いだしていた彼女の姿はそこにはなかった。彼女はある意味では男の記憶のなかの彼女よりも美しく変化していたのだ。そして男は黒駿馬にまたがり、果てのない草原と山を越えて、彼女の街を去る。村上春樹的なとりとめのない過去への追憶のようなものをかんじた。2014/06/05