内容説明
旧全集の作品に加え、大正期の長篇小説を中心に評論・詩歌・紀行文など多様な作品を収録し、浪漫主義から自然主義、そして理想主義へと傾倒していく軌跡を丹念に辿る。従来の花袋像を解き放ち、その巨大な全貌を明らかにする初の決定版全集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
3
「野の花」「春潮」は若き日の柳田国男をモデルとした小説。色白の美少年の大学生となれば、とにかく女にもてる。何もしなくても、美人が軒並みなびいてくる。でも、妙にプライドが高く潔癖症なところがあって、今一歩が踏み出せない。遊び人にもなれないし、恋に殉ずることもできない。結局、地位と金のため愛のない結婚をする。半分は創作だし、ブ男田山の羨望もまじっているだろうが、柳田も日記を貸したぐらいだから、恋に悩む悲劇の詩人を演じる気もあった。でも、これを書かれちゃ参ったろう。自然主義小説に批判的だったのも一つはこれかな。2018/07/17