出版社内容情報
5歳から6歳までの「とっちゃん」のお話。みんなと一緒のことができない子供たち、そしてそんな子供時代を過ごした全ての大人たちに、マイペースなとっちゃんが教えてくれる大事なこと。
内容説明
団地の引っ越しで連れて行けなかった飼い犬、いじめっこがいる幼稚園、のりたくない自転車…自分のペースでありのままに生きているとっちゃんの生活は、平和なことばかりではないけれど、一歩一歩ゆっくりと進んでいきます。
著者等紹介
藤野千夜[フジノチヤ]
1962年福岡県で生まれる。千葉大学教育学部卒業。1995年「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞を受賞、1998年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年に『夏の約束』で第122回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
73
楽しかった。読み始めは子供向きの読みものかと思ったけれど、読み進むにつれだんだん心に沁みてきた。時代は今から50年ぐらい昔でしょうか。5歳で保育園に通うとっちゃんと弟のひーくんが可愛い。家族の幸せの姿を感じさせられた。2025/05/29
Karl Heintz Schneider
44
主人公のとっちゃんは思っても、なかなか口に出すことができない。「おしっこ」のひと言が言えないで、おもらししちゃうことも。保育園のお友達はそんなとっちゃんのことをこう呼ぶ。「僕、とっちゃんみたいな子のことをなんて言うか知ってる。バカって言うんだよ。」とっちゃんはお母さんに尋ねる。「ぼくバカなの?」「そんなわけないじゃない!とっちゃんはバカじゃないよ。」そう言って我が子をぎゅっと抱きしめる母親の姿にグッとくる。子供の不安を親が自信をもって打ち消してあげること。子育てにおいて一番大切なことだと改めて気づかされた2025/07/20
sayuri
38
団地シリーズでお馴染み、藤野千夜さんの最新刊は5歳のとっちゃんの物語。とっちゃんは、お父さんとお母さん、おとうとのひーくんと四人で暮らしている。とっちゃんには苦手なことがたくさんある。言いたい事が言葉に出来ない。心の中には感情が溢れているのに、それを伝えることが難しい。自転車は嫌い、いじめっこがいる幼稚園も行きたくない。でも、おとうと思いで、時々大阪からやって来るお祖母ちゃんに優しくて素敵なところがいっぱい。人と同じじゃなくて大丈夫、ゆっくり歩んでいけばいいよと、温かな眼差しで包み込んでくれる優しい作品。2025/06/03
nyanco
31
5歳児とっちゃの視点で描かれています。 気持ちを伝えるのが巧くできず、慎重であることがのろまで理解不足と思われてしまう。 発達障害、今ほど認知されていなかった昭和の時代が見事に描かれていました。 2歳違いの弟のほうが・・・と比べられる辛さ。 お母さんの気持ちも解り、胸が締め付けられる。 おばあちゃんの存在が救いでした 何が正しい、間違えている という結論で終わらせていないラスト、読んだ人に考えさせる場を作ってくださった藤野さんの構成も良かったです。 #NetGalleyにて2025/06/23
もちこ
30
5歳〜6歳のとっちゃんがお話してくれているような文体で綴られる、家族と保育園の日々。 年中さん〜年長さんの年頃の子どもの様子がとてもリアルに描かれていて、ちょうど同じ年齢の我が子をイメージしながら読んだ。 感受性豊かで、なんでも気になるお年頃。 何度も同じことを聞かれてうんざりするお母さんの気持ちも、よく分かる(笑) この年代の子どもとしか話せない、いまの会話ややりとりを、もっと大事にしようと思えるお話だった。2025/07/01