出版社内容情報
子供の心の内側を描いてきた作家岩瀬成子が、自身の子供時代を綴ったエッセイ集。就学前から大人に至るまで、たいていの大人が忘れてしまう、子供時代のままならない時間を語り、その時の気持ちにつながる本30余冊と共に語る。(巻末に書籍リスト掲載)
内容説明
子供はままならない時間を生きている。子供の心を描いてきた作家・岩瀬成子が、子供時代を綴ったエッセイ集。
目次
1 鍵
2 味方
3 目の奥
4 川の夢
5 道の果て
6 本の壁
7 女子周辺
8 家族
9 日々
10 脱線
11 そばの戦争
著者等紹介
岩瀬成子[イワセジョウコ]
1950年山口県生まれ。1977年『朝はだんだん見えてくる』(日本児童文学者協会新人賞)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
148
「飛ぶ教室」に連載された「本を読む」をもとにした、昭和の面影を感じるエッセイ集。著者が大人になるまでを振り返り、同じ気持ちを抱いた本のあらすじを記しながら、言葉が紡がれていく。誰にでもある、なぜか覚えている場面。記憶に刻まれてしまったものを消すことは難しくて、未だにモヤモヤしたり、上手く表現できなかったり、その感情は晴れることなく、没入していく感覚。どこまでも連れて行かれそうな不安、夢も希望もあるはずなのに透き通ってみえない未来。重苦しさやわだかまり。私たちはただあてもなく歩いているだけなのかもしれない。2025/02/08
ふう
21
子育て真っ最中の頃、司書さんに薦められて岩瀬成子さんを知った。それから30年が経って、別の図書館の新刊コーナーでこの本を見つけて借りてみた。違和感、不適応感、辻褄が合わないまま呑み込んでしまったような気持ち悪さ。30年前が甦ってきたようだった。『にんじん』・『蹴りたい背中』以外は未読だが、それぞれの本で紹介された子どもたちの気持ちが響いてくるようだった。2025/06/07
もちこ
20
岩瀬さんの著書を読んだことがなかったのだけれど、この人の描く子どもの話を読んでみたい、と強く興味を掻き立てられた。 そのくらい、子ども時代の記憶の解像度が高い。 あのとき考えていたこと、感じていたこと、よくやっていた遊び… 岩瀬さんの子ども時代が、いろいろな本の少年少女たちを紹介しながら語られる。 親の立場として、刺さる言葉もあった。 子育てをする上で大事にしたいことを、この本から見つけることができた。2025/02/11
菱沼
5
しばらく前、岩瀬成子さんの本のことがなぜか繰り返し頭に浮かぶことがあった。そんなとき、知人からこの本が送られてきた。そうか、私の心はこの本を読むために迎える準備をしていたのだ、と思った。共感するところがたくさんある。そうそう私も、と思うあまり、自分の子ども時代の記憶がどんどん蘇ってしまい、読み進めるのに時間がかかった。とかく「明るく元気で子どもらしい(「らしい」って何?)」のが「良い子ども」と思われがちな中で、岩瀬成子さんは子どもたちの屈託を否定せずに書いてきた。この本を読んでよかった。2025/03/24
遠い日
5
大切に読んできた作家です。本書で感じたことは、岩瀬さんは子ども時代を全力で生きた人だということ。きかん気で強情っ張り、止まるところを知らぬ空想癖、子どもとしてそれらを抑えることなく過ごしたことで、見るもの聞くもの全部を自分の中で精査し、発信し、世界と交わってきた。強いこだわりは自分と切り結ぶものへの洞察力だ。「わだかまり」、上等。それでこそ作家の目の透徹が窺える。2025/02/12