出版社内容情報
気がついたら、沙漠の町の前に立っていたラナ。隣にいた男の子ジャミルは「竜に乗って空を飛んできた」と言いますが、ラナは、いつ、どうやって来たのか覚えがありません。
その町は、沙漠のオアシスだったのが、いまでは人には見えない〈蜃気楼の町〉になっていました。竜は、いのちの危険にさらされている子どもを救いだして連れてきていたのです。
故郷から逃げ出そうとしていた自分も、危ないところを助けられたのだろうか? そうだとしても、これからどうすればいいの? どこへ行けばいいの? どう生きていきたいのか、ラナは自問します。
イランやトルコなどの中近東に造詣の深い著者が、死の危険と隣り合わせの子ども達への思いをこめて綴った、方舟の町を舞台にした物語。
内容説明
そこは、まぼろしの町。もしも竜に運ばれて、そこにたどりついたら、きみならどうする?現代の方舟の物語。
著者等紹介
新藤悦子[シンドウエツコ]
1961年愛知県豊橋市生まれ。津田塾大学国際関係学科卒業。在学中から中近東に関心を持ち80年代に遊学。2004年刊行の『青いチューリップ』で日本児童文学者協会新人賞を受賞
佐竹美保[サタケミホ]
1957年富山県高岡市生まれ。ファンタジーやSF、古典、リアリズム、伝記など幅広いジャンルで装画や挿画を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
173
「竜の方舟」に乗って砂漠の中にある蜃気楼の町へ運ばれてきた少女ラナとジャミル少年は次の行く先も判らないけれど辿り着いた土地で親切な大人たちに助けられて日々を生きてゆく。竜は何も語らずに子供たちを任意の場所に降ろして、また空に舞い上がって次の場所へと飛んでいきます。本書には未来に対する不安や暗さはなく運命を受け入れ勇気を振り絞り自分の決断を信じて次のステップに進んでゆく少年少女の姿が描かれています。現実の中近東の難民の方々の人生は苦難に満ちていますが、本書を読むと不安を吹き飛ばし勇気づけられる事でしょうね。2025/01/24
☆よいこ
80
児童書。ファンタジー。佐竹美保さんの絵がぴったり▽女の子は髪を隠し学校に通うことが許されなくなり、祖国から逃げ出したラナは突然砂漠の町にいた。巨大な竜が眠る間、「竜の方舟」という町に滞在する。竜にキャラバン隊と一緒に旅に出るか、町に滞在するかを迫られ、ラナは少年ジャミルと共に町に残る。次のキャラバン隊が来たら、ジャミルはおばあちゃんの家に行くと言う。ラナは自分がどこへ向かえばいいのか、何がしたいのか悩む。ラナは竜使いのマジュヌーンに会うため、高い塔に登る決心をする▽難民の時代どこへ向かうか。2024.4刊2025/03/31
さく
17
佐竹美保さんの絵に惹かれて。おそらく新藤さん初読み。ラナとジャミルは、気づくと竜に乗っていて、竜に運ばれて蜃気楼の街「竜の方舟」に辿り着く。そのまま竜の方舟で過ごすか、竜に乗って新たな場所に行くか選ばなければならない。いかにもなファンタジーだけれど、戦争や難民についても触れられていて、ラストも、ほんとにこれがハッピーエンドなのかはわからない。新藤さんの他の作品も読んでみたい。2024/10/13
なま
7
★4 祈りの本。後書きより登場人物の画伯にはイラン人画家のモデルがいる。その画家が描いた「砂漠の廃墟」の絵を見て物語制作を思いたった様だ。自由を求めて旅立つ=逃げでは無か?という葛藤。災いが溢れる世の中で大きく、多くの願いがあれど救いきれない命。頑張っても次々にこぼれ落ちる悲惨な状況。「やってみないことにはなんともいえん。先のことはわからんもんだ(略)」p131。大切なのは今。そして「オレンジの誓い」のような信念。この物語は迷宮を抜け出せない。ただ、迷宮で道しるべとなる蝋燭の火を灯し続ける・・そんな一冊。2024/12/17
septiembre
7
蜃気楼の町に竜に乗ってきた二人の子ども。竜使いマジュヌーンとフープー。一人は残って一人は元の世界に戻る道を選ぶ。物語の背景が分かるにつれて元の世界に帰って大丈夫なのか心配になるけど、ジャミルの意思を尊重して応援するところがシビアでもあった。2024/06/14