内容説明
十七世紀、オスマン帝国の首都イスタンブール。さまざまな民族や言語、宗教を抱えるこの巨大な国際都市は、いつも活気にあふれている。少年マレクの師匠セルマは、「シンドバッド」の名を継ぐ正真正銘の冒険家だ。ランプの魔人をしたがえ、魔法の絨毯を駆って、颯爽と大空を飛び回る日々を送っている。そんなある日、いわくつきの宝探しに乗り出そうとした矢先、ふたりは不可解な事件に遭遇した。街の広場に立つ巨大なオベリスクが、一夜にして消えてしまったのだ…。襲いかかる数々の試練、手がかりとなる三つの鍵、謎めいた暗号、不気味な追っ手の影―。謎と魔法に彩られたきらびやかな冒険が、いま幕を開ける。
著者等紹介
小前亮[コマエリョウ]
1976年、島根県生まれ。東京大学大学院修了。大学での専攻は、中央アジア、イスラーム史。2005年に重厚な歴史小説『李世民』でデビューをはたす。豊かな歴史の知識を駆使し、歴史上の人々や当時の生活模様を活写した物語は、たちまち多くの読者を魅了した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鐵太郎
17
シンドバッドを名乗る冒険家は、代々その名を継いで今は23代、当代は男装の美女が名乗っているという設定。舞台は、16~17世紀ごろのオスマン帝国の首都イスタンブール。ここで繰り広げられる大冒険は、新たな小前亮節とでもいうべきか、なんとも素敵。これこそ、8歳から80歳までの少年たちの胸をときめかせる大道の冒険譚。小前さんも、いいお師さんの元で育った人なんだねぇ。2020/05/15
浅葉
11
★★★★★ 図書館 オスマン帝国の歴史・文化・風俗など説明部分と冒険など物語部分が絶妙なバランスで楽しめた。あとがきでもあるが、日本の歴史教育は中国と西欧に偏っているので、オスマンがこれほど爛熟した食文化を誇るとは全く無知だった。そして国際都市イスタンブールの17世紀が描かれるが、宗教や肌の色、言語で少しも譲り合えない現代よりも遥かに柔軟だったんだなと、時が経つ=進歩じゃないんだなと皮肉にも感じた。続編が読みたいと思う所で満足した方がいいのかも。2010/01/02
ようこ
5
最初のうちは説明が多くなかなか入り込めないが、中盤から面白くなってきた。読後は爽やかで作者の作品に対する愛情も感じる。2008/10/30
keisuke
4
面白かった。こういうのやっぱり好きなのか。2022/11/23
Abercrombie
4
17世紀のイスタンブールで、シンドバットの後継者が繰り広げる冒険ファンタジー。宝探しの謎解きはちょい呆気ないが、モスクの尖塔、バザールのカフヴェでの水煙草など、いかにもなイスラム社会描写が楽しい。イスラム世界が舞台の小説を読んだのは、F・マリオン・クロフォードの「妖霊ハーリド」以来かも。 ただ、シンドバットが女性である理由が弱い。もちろんむさい男よりはずっといいけど、当人が女性であることを嫌って、常につけひげ&男装じゃ意味がないなあ。 2018/03/06