出版社内容情報
人気者の高校生マットが無実の罪で、校内で孤立してしまう。その窮地を救うのは、自らを「アグリーガール」と呼ぶ少女の勇気と愛だった。哀しくも温かい、青春ラブストーリー。 小学校高学年～中学生
内容説明
自分らしくあることは、こんなにも痛く切ない。全米図書賞、Ｏ．ヘンリー賞作家のジョイス・Ｃ．オーツが贈る、なつかしくて胸が痛くなる、不思議なラブストーリー。
著者等紹介
オーツ，ジョイス・キャロル［オーツ，ジョイスキャロル］［Ｏａｔｅｓ，Ｊｏｙｃｅ Ｃａｒｏｌ］
１９３８年ニューヨーク生まれ。小説家、劇作家、短編小説作家、評論家などとして多彩に活躍中。Ｏ・ヘンリー賞、全米図書賞、ローゼンダール財団賞などを受賞し、ノーベル文学賞の候補にもあがる。ニュージャージー州プリンストン在住
神戸万知［ゴウドマチ］
ニューヨーク州立大学卒業。白百合女子大学大学院博士課程修了
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
146
本書は、著者の初めてのヤングアダルト小説であるらしい。読んでいて面白く痛快ではある。一気に読ませるスピード感と、主人公アーシュラ（＝アグリーガール）の造形がもっとも優れた点だろう。この作品が大好きだ、あるいは大いに勇気付けられたという読者はきっとたくさんいることだろう。ただ、その一方で、最初の事件への周辺の対応は、あまりにもステレオタイプだし、２番目の事件の解決のあり方もまた、アーシュラのそれまでの主義を裏切っている。さらには、３番目の事件にいたってはご都合主義の誹りをまぬがれない、など欠点もまた多い。2014/08/17
星落秋風五丈原
6
いかにもクールなイメージのアーシュラが、相手が自分の事を怒ってるんじゃないかと悶々としたり、立て続けに来るメールに照れる。「うわー目があってしまった」と真っ赤になってマットの前から去ってゆく彼女は恋に戸惑うフツーの女の子だ。一方自分を支持してくれるたった一人のアーシュラに向かって、立て続けにメールを送ってしまうマット(メールなので送信日時が出るのだ)は、アーシュラに負けず劣らずかわゆい。よいよい、そのままヘンな駆け引きなんぞ覚えず、ストレートに生きるのだよ、お二人さん。 2004/08/12
バグマン
5
ノーベル賞候補常連のオーツが書く、スポーツあり、恋愛あり、事件ありの青春もの。作中で行われるEメールのやり取りは、伝わりそうで伝わらないもどかしい感じがうまく描写されている。そこには行間の読み合いという高度なコミュニケーションがある。オーツの小説には「影」のモチーフがよく出てくる。思春期の自意識の葛藤に自己像が引き裂かれて、別人格が生まれるのだ。これは精神疾患とかじゃなく、コミュニケーション戦略としての別人格(キャラ)だ。キャラをうまく使いながら本当の自分の姿を自覚していく主人公の強かさに憧れる。2013/08/13
キムキム
4
ケガをしたのに自分だけ気づかなくて、傷口は他人に見えてることを知ってる、大人たちの声を遠くに聞きながらそばに寄り添う犬への話し方、撫で方、抱く感情、その全てが五感を超える描写すぎて、ジョイスさんへの好きがまた募ってしまった。痛みそれ自体に己の鬱屈を当てつける日もあるし、痛みというミノで自分の鬱屈に蓋をする生き方も教えてくれる。攻撃は最大の防御、メールのような間接的なやりとりの世界で「きみが正しい＆僕が悪かった」という手書きのメモ。アグリーガール含め、一人一人のキャラの良さを語るには、字数に収まりきらず…2019/08/11
保山ひャン
4
冗談で言ったことが警察に通報されて爆弾テロリスト扱いされたビッグマウスの高校生。その場にいてジョークだとわかっているクラスメイトは関わり合いになるのを恐れて証言してくれない。義憤にかられたアーシュラは男嫌いだが彼に助け船を出す。アーシュラは戦士的なキャラクター、アグリーガールの別人格を心に住まわせていたのだ。フリーキーグリーンアイのような設定のオーツ節が楽しめる滅法面白い小説だった。テロの疑いが晴れても止まらないイジメや距離感、子供の自由を阻止しようと介入してくる親、女性や人種への偏狭な考えとの闘い。傑作2018/09/24
