出版社内容情報
悲惨な事件のその後に音楽の祝福が。全編にとん、たたんの麦ふみの音が通底音となり、人が音楽を必要とするわけを心に響かせる物語。 中学生
ぼくたち三人がその港町にたどりついたのは、ぼくが赤ん坊の頃だった。数学教師の父と、町の吹奏楽団のティンパニストの祖父とのささやかな生活。しかし、「おだやかな紳士」と町の人から言われる祖父は、こと音楽が絡むと常軌を逸したところがあった。なにしろ、孫のぼくを楽器として育てようとしていたのだから・・・・・・
内容説明
のちに街をおそった災難、用務員さんの事故、それに「ねずみ男」の最期を予言したときにさえ、クーツェの足音はしごく無表情だった。ぼくにしかきこえないかわいた声でクーツェはさまざまなことをぼくだけに告げた。淡々と麦をふみつづけながら。音楽家を目指した少年のビルドゥングスロマン。人生のでたらめな悲喜劇を、真実の音がつらぬく。物語作家いしいしんじ、驚嘆の大長編。
著者等紹介
いしいしんじ[イシイシンジ]
1966年、大阪に生まれる。京都大学文学部仏文学科卒
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