内容説明
ナチス・ドイツによるチェコスロバキア解体と第2次世界大戦後の「ズデーテン・ドイツ人」の運命。現在の両国に真の和解はあるか?チェコの視点から探る。
目次
1 歴史にみる相剋―ドイツの脅威
2 冷戦下の葛藤―チェコ人とドイツ人
3 チェコの未来―大国ドイツの影
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoneyama
11
ズデーテン問題の歴史的いきさつを詳細に読む。第一次大戦後のオーストリア帝国解体により、チェコ領内のドイツ人は多数派から突然、格下と思っていたチェコ人の国の少数民族になってしまった。室町時代から先祖代々住んでいるのに。1920年代のチェコ政府は辛抱強くズデーテンドイツ人を隣人として扱おうとしたが、ナチスとミュンヒェン会談がひどすぎた。ズデーテンからのドイツ人の追放も、共産政権下のチェコでは長らく研究者さえなく、こじれにこじれた。東欧の戦後はソ連に誘拐され50年間訪れなかった。今も絶えないロシアの圧迫。2022/03/10
印度 洋一郎
6
チェコ勤務経験もある外交官の夫人が、チェコとドイツの関係をいわゆるズデーテン問題を中心に解説する。第二次大戦直前のドイツによるズデーテン割譲とチェコ併合、大戦終結後のチェコスロバキアによるドイツ人の追放という被害と加害が入り交じる因縁の関係だ。戦後、ズデーテンから追放されたドイツ人は西ドイツ国内で「郷人会」という保守的ロビー団体を形成し、政界へ大きな影響力を持つようになった。この政治力を背景に、冷戦終結後の統一ドイツとチェコスロバキアとの”和解”が行われるが、その実態はドイツがチェコに譲歩を強いていた。2022/11/02
CHRONO
3
2次大戦直前、オーストリアを併合したナチに次なる目標とされ、大国の思惑に翻弄されて戦うこともないまま併合されたチェコスロバキア。この時期のイギリスフランスの腰砕け外交はヒトラーに付け入るスキを十分すぎるほど与え、その後のホロコーストへの足掛かりとなっている。そんなドイツとチェコの関係を神聖ローマ帝国の時代からかみ砕いて説明してくれている。2021/08/31