出版社内容情報
文禄・慶長の役(壬辰戦争)の一時停戦期に、明朝は豊臣秀吉を日本国王に冊封し、彼と配下の武将たちに50セットの冠服を賜与した。国内に唯一、兵部箚と冠服一式すべてが現存する上杉景勝受贈品を各分野の専門家が分析・検討し、その歴史的背景や意匠の意味を追究する。当時の東アジア対外関係のみならず、中国服飾史を読み解く上で有益な書。
内容説明
秀吉も愛用した黒の薄絹をかぶせた唐冠。麒麟文様が犀角に透かし彫りされた腰帯。紅花染めあざやかな飛魚文様の明服。紺地の布で包んだ遊牧民由来のブーツ。米沢上杉神社に残る“奇跡の伝世品”は何を語るのか?
目次
序章 上杉景勝宛の武官任命通知書と明朝冠服
第一章 上杉神社蔵 重要文化財「明国箚付・明冠服類」とその伝来
第二章 明朝兵部発給箚付とその背景―「明国箚付上杉景勝宛」の紹介―
第3章 補子、龍にあらず
第四章 二つの金箱腰帯―上杉景勝の犀角帯と琉球国王尚家の石御帯―
第五章 胸背から補子へ―身分標識としての意匠の出現―
第六章 明朝の賜与と辺疆の拝領―官服授受にみる懐柔と支配の実態―
第七章 なぜ秀吉に大量の冠服がもたらされたのか―琉球王国への賜与事例から読み解く―
著者等紹介
新宮学[アラミヤマナブ]
1955年、山形県に生まれる。現在、山形大学名誉教授、人文社会科学部客員研究員。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Go Extreme
1
以下に、25個のフレーズを「」なしで選びます: 視覚的外交儀礼装置 華夷秩序の周縁支配装置 冊封的秩序 合理化された身分標識 主従関係構築 象徴による支配 時代を駆け抜けた昭和の神話 服制を通じた外交 文化的正統性 儀礼的統治 文化的懐柔 東アジアの国際秩序再編 身分の可視化 視覚的権威の象徴 中心-周縁構造 価値の可視化ツール 文化的権威の移植 儀礼的秩序への組み込み 権威演出の装置 文化交流の媒介者 政治的意味の衣装 外交的懐柔の形式 文化的位階の付与 制度的権威の可視化 象徴的支配の装置2025/04/02
韓信
0
壬申戦争における日明講和交渉時に明から上杉景勝へ贈られた冠服を分析し、秀吉や琉球に下賜されたものとの比較や、元代を中心とした中国歴代王朝における衣裳の身分標識機能との比較をとおして、明朝の冊封体制や中国服飾史における位置づけをする論文集。個人的には身分標識としての補子や明朝西南辺境における土官と冠服の関係が興味深かった。景勝の補子は飛魚か斗牛かという問題については、山海経に元ネタがある飛魚に比べて斗牛の方は解らず、素人目には単純に牛角の龍が斗牛とされたのでは…?と思ってしまうので、各瑞獣の解説がほしかった2025/04/27