出版社内容情報
主人公をキーワードに、歴史・文学・美術などからアプローチ。生涯や恋愛模様、紫式部の生きた時代に迫り、平安王朝へ誘う。
内容説明
時を越え、世界中で読まれ続ける『源氏物語』。主人公・光源氏をキーワードに、歴史・文学・美術など多様な切り口からアプローチ。その生涯や恋愛模様のほか、紫式部の生きた時代に迫り、物語の舞台になった平安王朝へ誘う。
目次
1 『源氏物語』の人物像(光源氏の“光”;光源氏と紫の上、そして明石の君;国母としての弘徽殿女御;頭中将の実像―『源氏物語』に描かれない平安貴族)
2 平安時代の政治と社会―『源氏物語』の時代をよむ(『源氏物語』が書かれた時代―歴史学から考える転換期の文学;後白河院・後鳥羽院の政治と文化)
3 『源氏物語』の文化史(道々の細工―都市の寵児たち;六条院にみる平安時代の庭園の四季;源氏絵を読む―宇治市源氏物語ミュージアム所蔵「源氏絵鑑帖」を例に)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白河清風
15
平成10年に宇治源氏物語ミュージアムが開館したが、開館20周年の記念講演がこの本の内容だ。興味深い点は、第一に光源氏のモデルだ。宇多天皇の第四皇子の敦慶親王が源氏の候補だ。親王は玉光宮と号され父天皇の愛人の伊勢を愛し、二人の間に娘を儲けた。第二は内裏火災の頻発だ。藤原宮以来の火事が960年に起き、その後内裏の火事が多発する。従来職務は早朝に始まり昼頃に終えたが、10世紀中葉には昼前後に始まり終わりは夜にずれ込んだため、火事が増えた。10世紀の貴族が朝型の生活なら源氏物語は生まれなかったと講演者は指摘する。2023/01/18
めえめえ
6
源氏物語ミュージアムの連続講座をまとめた本だそうです。何故頭の中将が明石まで源氏に会いにやって来ることが出来たかなど、頭の中将の公務の忙しさが興味深かったです。2021/09/25
Ayako Moroi
2
「頭中将」がどれくらい激務であったか、どうして内裏の火災が頻繁に起こるようになるのか、など、歴史学からのアプローチがおもしろかった。摂関期の貴族が夜型であったこと、同じ夜型として興味深い。2021/08/23
読書記録(2018/10~)
1
「頭中将の実像」の井上幸治氏の別著からたどり着く。史実の「頭中将」のみを詳細にとりあげた論は初めて読み、興味深かった。確かに頭弁のほうが、実像的にはつかみやすい。全体としては講座録なので、読みやすい論集。光源氏の<光>とは/平安時代の庭園/内裏火災の頻発の理由などが印象的だった。ほかにもさまざまな角度からの話が読める。2023/07/03
ゆの字
1
一般向けの連続講座を基にした書籍なので、とても読みやすかった。特に「頭中将の実像」や、火災が増えた一因として貴族の生活が夜型になったこと、京の職人や寝殿造の庭園について書かれた章が興味深く面白かった。弘徽殿女御の話だけは腑に落ちなかったな。桐壷更衣に嫌がらせをしたのは国母だったことと関係がある、みたいな導入のわりには読み終わっても「……で?」と肩透かしを食らった。連続講座は続いているようなので、もっと書籍化してほしいな。2022/05/07