内容説明
敗戦直後、アメリカが創り出した“太平洋戦争史”は、マッカーサーの島嶼戦が除外されたため、GHQ内部に対立を招いた。この確執から生じた「マッカーサーレポート」を検証し、今も残る太平洋戦争史の呪縛を解く。
目次
1 想定されなかった「島嶼戦」(島嶼戦とは何か;米軍と日本軍の島嶼戦)
2 CI&Eの『太平洋戦争史』と「真相箱」(「太平洋戦争史」の発表;「真相はこうだ」と「真相箱」)
3 G2歴史課が編纂した戦史(ウィロビーの戦史編纂の動き;G2歴史課の設置;日本側の資料収集態勢;『マッカーサーレポート』の刊行;『マッカーサーレポート』の検証)
著者等紹介
田中宏巳[タナカヒロミ]
1943年長野県松本市生まれ。1974年早稲田大学大学院博士課程単位取得退学、防衛大学校教授・帝京大学文学部教授を経て、防衛大学校名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兵衛介
6
確かに、太平洋戦争史の中で、マッカーサー軍のニューギニアキャンペーンは、不自然にスルーされている。ソロモン戦の次はマーシャル、マリアナ、レイテとニミッツ軍と海兵隊主役の戦史になっている。日本側の関心も、ニューギニア戦があまりにも悲惨過ぎて、そして語れる生還者自体が少なく総じて薄いという側面も2020/12/11
竜王五代の人
4
私の見たところ、この本のテーマは二つある。一つはニミッツの空母機動部隊と海兵隊を用いた力押しの戦いに対する、マッカーサーの陸上航空基地を主体とし、基地のみを攻め取って制空権を進めていく、いわば「真の飛び石作戦」(豪陸軍も含む自軍の犠牲も少なめ)の称揚である。もう一つは、この太平洋戦争の重要な面が等閑視されるに至った経緯である。きちんとした歴史を作るには世代単位で時間がかかるが、それとは別に当面の歴史観も、特にGHQによる占領体制の中で必要とされ(続く)2023/05/21
ホンドテン
3
図書館で、何の考えもなく手にとる。現在の太平洋戦争史観は米海軍、特に海兵隊の役割を過剰に強調しマッカーサー麾下の米陸軍の地道な海嶼戦を故意に無視している点で偏向甚だしいものであり、なぜそんな戦史観が現在も日米間で共有されているのか、そしてそれを覆そうとする歴史編纂の試み「マッカーサーレポート」の制作過程とその刊行、公開の挫折の経緯を明らかにしている。まぁなんというニッチな話題・・・だと思いながらかなりスラスラ読めて、興味深かった。まだ南北戦争戦史の編纂やってる彼の国の公史への執念にただただ脱帽。2016/12/31
電羊齋
3
米国が創りだした太平洋戦争史像は米海軍と日本海軍が戦い、米海軍が日本を破ったというもので、米陸軍(マッカーサー)による南西太平洋方面での島嶼戦がほぼ欠落。著者はその背景に米国陸海軍間の争いがあったことを明らかにしている。興味深いのは、これに対抗したマッカーサー側の戦史編纂の動きと、その中での服部卓四郎ら旧軍人の役割。著者は、服部ら旧軍人を例に、当事者自身が歴史を書くことの問題点を指摘している。著者が主張する、歴史学的手法に基づく客観性のある戦史編纂はまだまだこれからということだろう。2015/03/22
onepei
2
「太平洋戦争」における「島嶼戦」の位置づけと、戦史編纂における服部卓四郎の役割が興味深かった。2014/09/01