内容説明
周囲の敵と闘い続け、京都に新たな武家政権を築いた足利尊氏。青春の日々を過ごした関東を中心に生涯を辿り、お調子者でありながらもナイーブなその内面に迫る。尊氏ゆかりの足利や鎌倉を訪ね、等身大の実像を探る。
目次
1 足利尊氏の履歴書(薄明のなかの青春;尊氏と後醍醐;室町幕府の成立 ほか)
2 歴代足利一族をめぐる伝説と史実(異常な血統?;義兼の遺言;泰氏の「自由出家」事件 ほか)
3 足利・鎌倉の故地を歩く(足利編(勧農城跡―足利市岩井町;鑁阿寺・足利氏宅跡―足利市家富町;足利学校跡―足利市昌平町 ほか)
鎌倉編(長寿寺―鎌倉市山ノ内;浄光明寺―鎌倉市扇ヶ谷;足利氏屋敷跡(足利公方邸旧跡)―鎌倉市浄明寺 ほか))
著者等紹介
清水克行[シミズカツユキ]
1971年東京都に生まれる。1994年立教大学文学部卒業。2002年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、明治大学商学部准教授。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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厩戸皇子そっくりおじさん・寺
76
清水克行先生が足利尊氏の伝記を書いていた。清水先生も尊氏さんも好きなので読む。歴史上の人物の伝記というのは、決まって初代の御先祖様あたりの話からスタートして、ひどいのになると全体の半分近くになってようやく主役が誕生する本があり、しばしば興醒めさせられるのが常だが、本書は第1章からダイレクトに尊氏伝で、本当に清水先生はよくわかっている(町田明広先生も名著『新説・坂本龍馬』でルーツ記述をカット、さすがだ)。しかし、足利尊氏はルーツがまたものすごい。だから2章に呪われた(と言われる)血筋の謎解きがあり、面白い。2021/07/10
はるわか
22
人望はあるが無定見でナイーブで決して政治家向きではない兄尊氏と、高い理想をもち真面目一辺倒な弟直義、どちらが欠けても室町幕府の創業は難しかっただろう。後醍醐天皇の死と南朝の脅威の減退により幕府内部の対立関係が顕在化。観応の擾乱:高師直の兵力掌握・御所巻、直義失脚、直冬の九州での挙兵、高師直殺害、正平一統、薩埵山合戦、直義の謎の死。権力は尊氏のもとに一元化、嫡男義詮に継承。尊氏の地蔵信仰。鎌倉幕府を滅ぼし、後醍醐天皇を京都から追い、弟や子と死闘を演じる尊氏の生涯こそこの世の地獄を体現。2016/06/22
Toska
18
この分量でよくこれだけ掘り下げられるなあ、と感心することしきり。もしかしたら日本史上最大の怪(快)人物かもしれない足利尊氏について。躁鬱説には慎重だが、常人には計り知れない内面の葛藤、あるいは心の闇にまで踏み込んでいる。性格は真逆だが同じく超人的な能力を持つ直義が弟、というのがこれまたずるい。また、当時の武家における姻戚関係の重要性は勉強になった。母方・上杉氏の影響には無視できないものがある。2023/04/25
マツユキ
14
ジャンプ漫画から足利尊氏に興味を持ったので、まず、戦前のイメージに驚く。尊氏さんが登場する小説を読んでいますが、大きく時代を動かした割には、捉えどころのない人物。読んでも変わりはありませんでしたが、行動一つ一つに背景があり、簡単に答えは出せないんだな。尊氏さんだけではなく、ご先祖の経歴も分かり、当然ですが、頼朝にも繋がり、普段、読まないタイプの本ですが、満足。2021/12/23
浅香山三郎
12
足利尊氏といふ人に対する世の中の評価の変遷を検証しながら、彼が歴史の表舞台に立つ前の行動圏であつた、関東といふ場所での足跡を辿る。とくに、尊氏や足利氏歴代に対する躁鬱病ともいふべき評価については、慎重であるべきとし、歴代当主の信仰や鎌倉政界・佐介流北条氏の動向との関連など、歴史的に理解する道を示す。そもそも、尊氏の異母兄であつた嫡子高義が夭折しなければ、尊氏・直義兄弟がかやうに重要人物とはならなかつたことなど、意外に尊氏の前半生について知らぬことが多く、面白く読んだ。2021/12/22